「レジなし」にもアマゾン・エフェクト 小売各社が導入加速

今年5月にオープンしたNY店(Photo by Spencer Platt/Getty Images)

米アマゾン・ドット・コムがレジなし店舗「アマゾン・ゴー」事業の拡大に動いている。米国内で従来のコンビニに加え、大型のスーパーやポップアップストアの出店を計画。自社の技術をほかの業者にライセンス供与する準備も進める。会計にかかる時間の短縮は客からの要望が強いこともあり、アマゾンの競合企業などほかの業者の間でもレジなし店舗の導入に向けた動きが活発になっている。

フルタイムの仕事が約3500件──。アマゾンの求人サイトで“Amazon Go”と入力すると、そんな結果が表示される。店舗スタッフ、マーケティング責任者、さまざまな分野のエンジニアやプログラムマネジャーなど、職種も多岐にわたる。

市内初のアマゾン・ゴーが今年5月に開店したニューヨーク市。半年で店舗数は6に増え、うち4店舗はマンハッタン中心部に集中する。市内では近くさらに2店舗がオープンを予定する。

アマゾン・ゴー関連の活発な求人やニューヨークの繁華街での出店ラッシュは、「ジャスト・ウォーク・アウト(Just Walk Out、歩いて出るだけ)」をうたうこのレジなし店舗を、アマゾンが一段と広げようとしていることをうががわせる動きだ。

アマゾン・ゴーでは、コンピューターが画像から情報を読み取るコンピュータービジョン、センサーが集めたデータを融合するセンサーフュージョン、ディープラーニング(深層学習)など、自動運転車に使われているものと同様の技術を活用。客は商品を手に取って店を出るだけで、アプリ経由で精算が完了する。

アマゾンは2年足らず前にアマゾン・ゴーの1号店をお膝元のシアトルにオープン。今ではシアトルとニューヨークのほか、サンフランシスコ、シカゴに計21店舗を構え、一部の店舗ではホットコーヒーやエスプレッソも提供している。

この新しい店舗形態に手応えを感じているとみられるアマゾンは、野心的な目標を掲げている。これまで出店したのはすべてコンビニ型だったが、ブルームバーグが先週報じたところによると、これまでよりもはるかに大型の店舗となるスーパーを来年シアトルに出店するほか、空きスペースなどで短期間営業するポップアップストアを複数開設することを計画している。ブルームバーグは以前、アマゾンはアマゾン・ゴーに関して、2021年までにコンビニ型の店舗を3000店の展開することを目指しているとも伝えていた。

ブルームバーグによると、アマゾンはこのほか、アマゾン・ゴー関連技術のライセンス供与を巡って複数の企業と交渉を進めているという。アマゾン側には、技術をライセンス供与すると開発などの経費をカバーできるメリットがある。RBCキャピタル・マーケッツのアナリストの試算では、アマゾン・ゴーのコンビニ型店舗ではハード機器に1店当たり平均約100万ドル(約1億900万円)の経費がかかるといい、収支がとんとんになるまでに約2年要するという。
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編集=江戸伸禎

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