消費者の間では、店舗では会計にかかる時間がなるべく短くなるようにしてほしいという要望が強い。コンサルティング会社A.T.カーニーの今年の消費者調査によれば、回答者の72%が最も欲しい店舗内の技術にレジ時間を短縮する技術を挙げている。
アマゾンが翌々日配送を新たな業界標準とした(最近は翌日配送をそうしつつある)ように、ほかの業者も消費者の要望に応えてレジなし化を実現したいと思うようになるのは不思議ではない。実際、ここへ来てアマゾンの競合やほかの小売業者などが、レジ不要の決済技術を手がける新興企業と提携する事例が増えてきている。
英スーパー最大手のテスコは10月、レジなし店舗システムを開発するイスラエルのベンチャー企業、トリゴ(Trigo)に出資した。トリゴによると、テスラ本社の敷地内に設けた300平方メートル弱の広さの店舗で実証実験を行っており、近くテスコの従業員にも参加してもらう予定だという。
フランスの小売り大手カルフールも、商品棚のデジタル化サービスを提供する同国のベンチャー企業、コピアス・テクノロジー(Qopius Technology)と組み、実証実験を進めていると伝えられている。
米国でも、ベイエリアのベンチャー企業数社がこれまでにレジなし決済技術をお披露目している。例えば、バークレーに本社を置く創業3年のグラバンゴ(Grabango)は、スーパーのジャイアント・イーグルなどの店舗でレジなし技術をテストしているという。
レジなし技術の導入はスポーツなどの会場にも広がる。米大リーグのレッドソックス傘下の3Aチーム、ウースター・レッドソックスは先ごろ、米ベンチャーのスタンダード・コグニッション(Standard Cognition)との間で、21年のオープンに向けて建設中で完成すれば本拠地となる施設「ポーラー・パーク」に、自動精算の店舗を設けるための契約を結んでいる。
米プロバスケットボールNBAのサクラメント・キングスの本拠地「ゴールデン1センター」は米ベンチャーのジッピン(Zippin)と提携し、1か月ほど前に、同施設内にレジなし店舗をオープンさせた。ジッピンは8月、ブラジルの小売り最大手とも、同国内の店舗でのレジなし決済技術の導入に向けて戦略的パートナーシップを結んでいる。
ジッピンの創業者で最高経営責任者(CEO)のクリシュナ・モツクリは、筆者が今年行ったインタビューで、同社の事業は「アマゾン・ゴーの登場をきっかけに勢いづいた」と語っていた。アマゾン・ゴーの店舗が一般向けにオープンした後、小売業者から自社のレジなし技術を真剣に検討もらえるようになったという。モツクリは先週、ゴールデン1センター内の店舗について「とてもうまくいっている」と話した。
小売業界の巨象は相変わらず、破壊的でゲームチェンジングな影響を与えているようだ。