成瀬:今後のお寺、神社の未来を考える上で先ほど中川さんも仰っていましたが、同じような建物で同じように見えがちだけど、本当に1つひとつ全く違う。何が違うのかは、そこにしかない魅力を見つけ、そこでしかないことを作ることが大切になってくるはずです。
それはつまり、訪れた人たちに何を持って帰ってもらうかを考えることでもあります。強みはたくさん言いたくなるのですが、訪れた人たちはひとつのことしか覚えていない。ここにしかない体験、持って帰ってもらいたい思いをひとつに絞って考えることが大事になります。
そして、それをもとにどうコミュニケーションするか。手前味噌ですが、わかりやすいのがオーディオガイドで物語として伝えること。ひとつの物語になって体験していくことで、忘れられない体験になり、ファンになってくれる。
そして、訪日外国人の対応も重要になってきます。日本人はある程度の歴史を知っていますが、海外の人は分からないことが多い。日本の文化は一見するとわからないことも多いのですが、そこに根付く物語を聴くことでその凄みをわかることが多い。施設のコンテンツを充実させる意味で、受け入れ態勢を整えることも大事だなと思います。
中川:自分は機能になりさがるのではなく、意味を取り戻すことが大事になると思います。どちらかといえば、個人的に観光ではなく地元における存在意義みたいなことに興味があります。
例えば、お寺は普通に生活しているだけだとお葬式や法事のときしか行かない。それは、単に機能に過ぎないからなんですよね。葬式しなきゃいけない、供養しなきゃいけない、という機能的側面しかない。そのため極端に言えば、安くて便利な方に流れてしまう。
だからこそ、意味を取り戻さなければいけない。なぜ、供養しなきゃいけないのか、供養する意図は何なのか。そこの意味を伝えていけば、価値を見出してやると思う。今は義務になってしまっている。お寺側からすると当たり前かもしれないけど、こちらからすれば当たり前ではない。そういったことをちゃんと伝えること。意味を取り戻すと、それは必ず続いていくし、価値を見い出せるようになるんじゃないか、と思います。