日本に古くから根付くお寺と神社。時代の変化とともに、人々の価値観も変わる中で、お寺と神社のリブランディング、プロデュースに取り組むのが中川政七商店とON THE TRIPだ。
「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、工芸メーカーのコンサルティング事業も展開する中川政七商店が今まさに手がけているのが、九州最北端に位置し、1800年の歴史をもつ和布刈神社のコンサルティング。一方のON THE TRIPは京都市と連携し、三千院や妙心寺退蔵院など、数多くのお寺のプロデュースを行っている。
「従来のままでは、お寺と神社は厳しくなっていく」と、お互いに危機感を寄せている中川政七商店の中川政七とON THE TRIPの成瀬勇輝。彼らが考える、お寺と神社のビジネス的課題は何か、そして今後どんなことを考えるべきなのか。彼らに話し合ってもらった。
お寺、神社には「経営がない」
中川:私は工芸メーカーのコンサルティングを中心に、現在は神社のリブランディングにも関わっているのですが、お寺も神社も課題は同じだと思います。端的に言ってしまえば、経営がないんですよね。「お寺や神社に経営はそぐわない」と思う人もいるかもしれないですが、そこで働く人がいて、お給料が発生している以上は経営が必要。でも、多くのお寺や神社には経営がない。
お寺にも神社にも年間の行事計画があるのと同じように、年間の経営計画、中期経営計画がなければいけないと思っています。とはいえ、お寺や神社の経営は少し難しい面もあって。定期的に修理・修繕をしなければいけません。
日々、商いをやって“損益”のみを見ていれば簡単かもしれないですが、お寺や神社という資産をもとに貸借も見ながら、20年、30年、もしかしたら100年単位で計画を考えていかなければいけない。決して簡単ではないのですが、経営の考えは絶対に必要。でも、世の中の多くのお寺、神社は経営的視点が抜け落ちている。そこが大きな課題だと思います。
成瀬:おっしゃる通りですね。売上と支出をどう見ていくかが大切なのですが、そこがボヤッとしたままになっているところが多い。
自分はお寺や神社などの文化財のオーディオガイドを制作したり、新たな体験づくりをお手伝いしたりしているのですが、よく相談されることがあります。それは、どうやったら拝観者、入館者を増やしていけるか。そこでなぜ人を増やしたいか聞いてみると、維持するために設備投資にお金がかかるので収益を確保しないといけない、と。
とくに昨年は天災が多く、屋根が飛んでしまったり、どこかが破損してしまったりすることが多かった。屋根を修理するのに何千万円もかかるんです。その費用をどうやって捻出するのか。
現状は行政が一部を負担してくれて、残りをお寺が負担するスキームになっていますが、それでもお寺の負担は大きい。また、若い世代になればなるほど檀家制度から離れていってしまう人も多い。そうなったときに売上をどう立てるのか。そういった課題を解決していくためにも、経営的視点は必要ですね。