中川:神社も同じで神主になるには資格が必要なんです。ある意味、専門職と同じだと思っていて、彼らはいわゆる神様に使える、祀りごとを仕切ることの専門家。病院でいえば医者のような存在です。
だからこそ、彼らがより力を発揮するためには経営者が絶対いる必要があるのに、そうはなっていない。日本も昔は医者が病院を経営していましたが、大きな病院であればあるほど医者が経営を担うのは難しくなり、経営者が別でいる。お寺や神社にもそういった存在が絶対必要だと思います。特に神社はすぐに必要になってくるでしょうね。
成瀬:自分もお寺よりも神社の方が緊急な感じがしますね。
中川:お寺は檀家さんからのお布施が一定の収入源になるので、まだ大丈夫だと思いますが、神社はそういったものがないので、もっと早いタイミングで経営の考えを持たなければ立ち行かなくなっていくと思います。
表面的なデザイン神社、デザインお寺が乱立する
成瀬:また昨今、訪日外国人向けに国や市がバックアップし、訪日外国人向けの取り組みが増えてきているのですが、ここにも大きな問題があると思っていて。プロモーションがメインになってしまっているんです。
もちろん、それも大事なんですけど、予算のほとんどがプロモーションに流れてしまっているのは、どうなのかなと。観光客が訪れたときに、どういう受け入れ態勢にするか。なにを体験してもらうのか。一番大事なコンテンツが抜け落ちていて。結局、行ってみたらガッカリする、行ったところで口コミも起きないまま一度限りになってしまう。そんな状態に陥っているんです。
中川:まさにそうですね。地域ブランディングも一緒ですが、ブランディングは分解するとコンテンツとコミュニケーションに分けられる。今行われている取り組みの多くはコミュニケーションばかりに力を入れてしまっている。コミュニケーションは良いコンテンツがあってこそ生まれるもの。
例えば、神社の外観もパッと見ではそこまで違いはないですけど、もっと深掘りしていくと明らかに違いがあり、それぞれの神社に良い話がある。それを掘り起こすことなく、プロモーションばかりやってしまっているのが現状。自分のことは自分が一番よく分からないみたいな戦略性のなさが、自分たちの魅力をちゃんと伝えられない状況を作り出している。
神社のブランディング戦略を考える上で、重要になるのが4つの強み。神社は氏子か崇拝か、観光かコミュニティか。この4つの要素しか強みはない。投資できるリソースが10あったとして、それをどこにどうやって割り振るかを最初に決めないといけない。
氏子に決めたなら氏子に振り切って、氏子のためになることを考える。総花的に氏子もやるし、縁結びもやるし、インバウンドの対応もする。こうやって全部やってしまうのは、つまるところ戦略がないに等しい。自分たちの強みをどこにどれだけ割り振るか、それを決めるのが最初の戦略。戦略とは「捨てる」ことでもあるので、ここはやらないと決めることも重要になってきます。