たった15分。1日の終わりの「雑談」が親子を変える

久山葉子氏


思春期は「長い人生に通過するひとつのステージ」

はっきり言って、子どもはかわいいだけでは済まされないこともかなり多い。

朝も夜も関係なく泣き出す。お腹すいたから泣いているのか、おむつが気持ち悪いからなのか、それとも病気なのか……。それがいったい何を意味しているのかわからない。さらには、こちらの都合などお構いなし。「今忙しそうだから泣くのは控えておこう」などと忖度してくれる子どもはまずいない。24時間フル稼働だ。しかも、成長するにつれて育児が楽になるということは残念ながらない。それぞれの過程において、「大変」の質が変わってくるだけだ。


スウェーデン、スンツヴァルにある久山邸のウッドデッキ。キッチンからのぞんだところ

こういった一連の育児の大変さを、スウェーデンのお父さんは身をもって経験している。手に負えない子どもの姿も熟知し、それらをひっくるめたすべてが「自分の子ども」であることもわかっている。扱いが難しいとされる思春期も「長い人生に通過するただひとつのステージ」にすぎないのだ。だから、腫れものに触るような扱いをするでもなく、逃げるでもなく、ただ淡々とつき合っていくことができるのだろう。そうしたぶれない姿勢は確実に子どもにも伝わっているはずだ。

スウェーデンの父親は、とにかく子どもと接する時間を大切にしていると久山氏は言う。それはもちろん、残業がほとんどないので毎日17時ぴったりには会社を出て(時にはそれより早く帰ることも)、15分後には家に帰ってきているといった環境や制度の違いによるところも多いけれど、努めて時間を持つようにしているところが大きい。

親は子どもの使う「言語」すら選べない?

「スウェーデンで暮らしていて、子育てについて日本とスウェーデンで大きく異なるのは、子どもを、親の所有物ではなく“個”として見ているところではないでしょうか。独立した人間であると見なし、フラットな関係を築いています」と久山氏。けっして、親の考え方を一方的に押しつけない。子どもの考えをきちんと受け止め、尊重する。親にできるのは、子どもが誤った方向に行かないようにすること。親は本人の選択を応援していく。それがたとえ親の意向とは異なる決定だったとしても。
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文=柴田恵理 編集=石井節子

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