前述した、「銀行の預金金利が1%で、インフレ率(物価上昇率)が3%のとき、翌年にはより多くの物が買えるようになるか。それとも買えなくなるか」という質問。非常によい内容だと思うが、現在の日本の状況を鑑みると、現状に即していないため実感がなく、机上の空論として捉えられてしまうかもしれない。
普通預金よりも金利が高く設定されている定期預金の金利をみても、最も高い金利を提示しているオンライン銀行でも、わずか0.2%となっている。また、インフレ率として総務省統計局が3月22日に発表した消費者物価指数をみてみると、こちらも前年比+0.2%となっている。
異国で高金利や物価上昇を実感する
どうしても日本の現状を考えると、預金金利も物価上昇率もゼロに近いため、なかなか実感として金利やインフレの感覚を身に付けられない。低金利かつ物価が上昇しない状況はここ最近の話ではなく、かれこれ20年以上続いているため、筆者自身も銀行に預けているだけで10年後に何割も増えていたり、商品の値段が1年前よりも大きく上がったりするという経験はしていない。
しかし、インドネシアのジャカルタに駐在していたとき、強烈に金利とインフレを実感した記憶がある。同国の国有銀行傘下の証券会社に勤めていたため、銀行預金の金利を目にする機会は非常に多かったのだが、1年物の定期預金で4~6%程度の金利がつくのをみて驚いた。
預ける金額や、銀行によって大きく金利に差が付くのも印象的だったが、仮に年間6%の金利が付くのであれば、複利で考えると12年後には預金が倍になる計算である。この時、初めて銀行に預けておくだけで資産が増えていくという感覚を得た。
また、当時はインドネシアの消費者物価指数も前年比+6%を上下していた。よく仕事帰りにコンビニやスーパーでポテトチップスなどを買っていたのだが、駐在を開始した時と帰任時では1.5倍ぐらい値段が変わっていた記憶がある。
日本では、バブルを経験した世代から、「タクシーに乗るとき、距離が短いと乗車拒否されるので、紙幣を手にもってを呼んだ」と聞く。日本にもそんな好景気な時代があったのかと、都市伝説のように思っていたが、上海万博の頃に中国出張した際にタクシーがなかなか捕まらない経験をして、これが彼らの言っていた状況かと、国は違えど好景気の日本を疑似体験した。
金融や経済は暮らしに密着しているため、実際に行くことで、知識を実体験として体感できるのでオススメだ。特に新興国に行くと日本との違いを大きく感じられるため、更に効果的だろう。
異国での暮らすと、為替の変動なども気にするようになる。日本円を銀行や街の両替所で両替するため、為替レートを見る癖がつくだろう。駅から近かったり、空港やショッピングモールの中にある両替所よりも、商店街や裏通りの両替所の方が為替レートが有利だったりすることも、ビジネスセンスを磨くうえでいい機会になるかもしれない。
異国での生活というと語学力アップのイメージが強いが、意識の持ちようでは金融リテラシーも向上する機会になると考えている。
連載:0歳からの「お金の話」
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