海外で生活すると、語学力だけでなく金融リテラシーも向上する

Sol de Zuasnabar Brebbia/Getty Images

金融教育をライフワークとするなかで、いかに子どもたちが楽しみながら、質の高い金融教育を受けられるのかを考え、日々試行錯誤している。関連するニュースや記事にも目を通したり、イベントに参加したりもしているが、日本国内ではまだそれほど成功した事例も多くないため、海外の情報にも目を向けるようにしている。

海外の金融機関に務める知人と情報交換をしていてわかったのは、どの国も金融教育が普及しているというより、意識の高い親が特別な授業を受けさせたり、イベントに参加させていたりするのが現状のようだ。

各国での教育内容を聞いていると、日本だけでなく異国で生活をすることで、より深く金融について理解できるようになるのではないかという感想を持つ。

海外の金融教育の内容とは?

直近では米国とUAE(アラブ首長国連邦)の知人と情報交換をしたが、興味深いことに2人から聞いた金融教育の内容は非常に似ていた。

10代になったばかりの子どもたちに対して、まずは収入と費用の計算をさせ、家計管理の方法を覚えさせる。つぎに、銀行の役割について教え、貯金やローンについても学ばせる。その後、投資についての基礎知識を与え、現役世代にどのようにして老後資金を形成していくかを計算させるようだ。

これらの基礎的なクラスが終わると、経済の知識も交えて、少し複雑な計算もさせているようだ。たとえば、「銀行の預金金利が1%で、インフレ率(物価上昇率)が3%のとき、翌年にはより多くの物が買えるようになるか。それとも買えなくなるか」という質問をするという。

このような金融や経済に関する授業以外にも、実際に子どもたちにビジネスプランを書かせて、疑似的に会社運営をさせる授業もあるそうだ。そこでは、個人ではなく、法人のオーナーとしての資金管理を学習することで、会計の知識を身に付けさせるらしい。 

筆者は常々、金融教育は経済学と会計をベースにすべきと主張してきたが、まさにそれが実現されている様子を聞いて、とても感動した。

この充実した内容を10代になったばかりで学習できるのは非常に素晴らしいのだが、基礎的な内容を7歳から教えているということにとても驚いた。日本では高校生や大学生向けの金融教育の内容に近いのではないだろうか。

子どもに教える立場として、いつも自分自身も反省をしなくてはいけないと思うのは、多くの場面で、大人が子どもの限界を勝手に決めてしまっているのではないかということである。これぐらいの難易度は高校生にならないと無理かな、などと大人の尺度で考えてしまいがちだが、丁寧に教えて、反復練習をさせることで、意外と理解してしまうことも多いのだ。
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文=森永康平

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