しかしEITデジタルのウィレム・ヨンケル最高経営責任者(CEO)は、欧州が米国や中国からさらに後れを取る危険があると警鐘を鳴らしている。
欧州が巻き返しを図るには、イノベーションを加速させる必要がある。しかし、欧州が苦戦しているという現状は、多くの意味で不可解だ。コーネル大学、欧州経営大学院(INSEAD)、世界知的所有権機関(WIPO)がまとめたグローバル・イノベーション・インデックス(GII)では、欧州諸国が上位を占めていることが多く、欧州では活発なイノベーションエコシステムに必要なインフラや人材、資金がそろっていることが示唆されているからだ。
欧州での起業事情
だが、インペリアル・カレッジ・ビジネススクールが新たにまとめた「欧州デジタル起業システムインデックス(EIDES)」では、いくつかの課題が浮かび上がっている。同インデックスは、さまざまな評価基準を基に各国の起業支援力を測り、28のEU加盟国を順位づけしたものだ。
北欧諸国の成功
北欧諸国は今まで、゙グローバル・イノベーション・インデックスにて高い成績を収めてきた。フィンランド、デンマーク、スウェーデンの3カ国はいずれも、2018年の上位10位以内に入っている。
EIDESでも、デンマークが首位、スウェーデンが2位に入った。3位にはルクセンブルクが続き、フィンランドは4位となって北欧勢のトップ3独占は果たせなかった。5位はドイツ、4位はそれに僅差で続いた英国だった。
北欧諸国の成功は驚くべきことではないだろう。世界の約100都市100万社以上からのデータを基に作成された昨年の「グローバル・スタートアップ・エコシステム」報告書では、フィンランドの首都ヘルシンキが世界で最高のスタートアップエコシステムに選ばれている。ベンチャー投資の分野では、米国が今もマーケットリーダーの立場にいるものの、欧州とアジアへの明確な移行が起きており、その流れを中国が率いている。
同報告書から分かるのは、イノベーションやスタートアップの活動がもはや国ごとのものではなくなり、都市や地域が起業のもたらす活力や成果に注力するようになっていることだ。ヘルシンキは人工知能(AI)や生命科学の分野、ロンドンはフィンテック、ミュンヘンはモビリティーと、それぞれに強みがある。