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「グローバル思考」の伸ばし方

増村岳史氏の著書『ビジネスの限界はアートで超えろ!』より

ビジネス界に「デザイン思考」という考え方が普及する中、企業を変革する経営戦略のツールとして、「デザイン」を包括したより広域な「アート思考」が注目されていることを、昨年このコラムで紹介しました。今年の秋になり、さらにその動きが加速しているように感じます。

10月、芸術家一家に育ったリクルート出身の増村岳史さんが『ビジネスの限界はアートで超えろ!』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を出版されました。この本の面白いところは、アートの技法とビジネスイノベーションの共通項などが語られとともに、終盤にはその実践法が紹介されているところです。

それは、「アート・アンド・ロジック」という増村さんが主催するデッサン講座の内容で、ジャンパーを着た男性のスケッチを模写するプログラムなのですが、その内容にハッとさせられました。

模写するコツとして、「逆さまの絵(元のスケッチ)を見る時間を意図的に多くとってください」と書かれていたのです。

増村さんによると、「ひっくり返すことで絵が“単なる線の集合体”のようなものとなり、認知バイアスがはずれ、正確な情報の入力(インプット)が可能になる」とのこと。そして、無意識の思い込みがなくなった結果、「正しい出力(アウトプット)」ができるので、手本を逆さにして描いた方が上手な模写になるのだそうです。

美術館は考えるための場所

私は音楽がとても好きですが、絵に関しては描くのも見るの苦手で、話題の絵画作品も「どこがいいのかわからない」と思うこともよくあります。それでも、2〜3カ月に1回は美術館に出掛けます。

アーティストが絵を通じて問いかけようとしていることは何か、それをどのように表現しようとしたのか、自分の頭で考えるきっかけにするためです。なぜ自分はその視点を持てなかったのか、アーティストが提起している問題に自分はどう向き合うのか……思考を巡らせることで、社会に対する自分独自の視点を見つけたり、自分自身の生き方のヒントを得たりしています。

音楽でも同じことは可能で、実際に演奏する際には、楽譜を読んだり、他の人の演奏を聴きながら、同じような作業をしています。しかし音楽はフローで流れていくため、一時停止をして、前に戻って考え直すというのは難しい。その点、絵画や彫刻などは、そこに作品として存在するので、作品を前に前後左右いろんな角度や距離から眺めたり、近くに座ってじっと考えたりという行為をしやすいのです。



増村さんの本で紹介されている「模写をする」というプログラムは、美術館に行くこととかなり共通するものがあるように思います。絵を描くという行為を通して、自分の持つ認知バイアスを意識したり、物事を多角的に見るという、ビジネスにおいても必要な要素を学ぶことができます。

文=秋山ゆかり 写真=Getty Images

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