世界のエリートに学ぶ「創造的思考力」の伸ばし方

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この数年で「デザイン思考」が新しいフェーズに入り、イノベーションを生む手段としてのみならず、企業を変革する経営戦略のツールとしても使われるようになってきています。さらには、数年前から「デザイン」を「芸術」に広げた考え方も出てきています。特に、昨年ごろからその動きは顕著といえるでしょう。

昨年、フィナンシャル・タイムズが「The art school MBA that promotes creative innovation(美術大学のMBAが創造的イノベーションを加速する)」という記事で、グローバル企業が幹部トレーニングを美術系大学院と一緒に行う実態を報じました。

また、別の記事では、『Art Thinking』(邦訳なし)の著者であるエイミー・ウィタカー氏を紹介するなど、芸術をビジネスに取り込む重要性を説いています。『Art Thinking』の中で、デザイン思考は、自分の外側から与えられた条件の中で創造的アイデアを出すものであり、アート思考は自分の内側から湧き起る目的を作るとものだと説明されています。

デザイン思考が普及する中で、経営手法は「デザイン」を包括した「芸術」へと進化していっているのです。

日本でも問われる「芸術思考」の重要性

日本では、2012年に明治大学の阪井和男氏と東北芸術大学の有賀三夏氏が「芸術思考」という言葉を作り、提唱し始めています。文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成事業に採択され、数多くの研究が進められ、論文にまとめられたり、講演やワークショップなどが行われたりしています。

たとえば、2015年に情報コミュニケーション学会の全国大会で研究奨励賞を受賞した阪井氏・有賀氏・筆者の3名で書いた「新規事業を生み出す芸術思考」では、新規事業におけるデザイン思考の限界を指摘し、芸術思考をゼロから顧客を生み出す事業に適用し、5つのステップにまとめています。

1. 新規事業を思い描き、関係者に共有する
2. 思い描いた事業を実現するための人・モノ(技術)・金を含むパーツを揃える
3. 現在あるものでシンプルなビジネスモデルを作る
4. 少額の投資によるフィージビリティ・スタディで実現性をチェックする
5. 実現可能であれば実行し、さもなければギャップが何かを調べ(1)あるいは(2)に戻る

顧客が明確でない新規事業の開発の場合は、目的を問い直す芸術思考で新しい仮説やビジョンを創造したあとに、デザイン思考を適用することが有効です。
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文=秋山ゆかり

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