お互いに、「自分の働く上での一番の優先順位はなにか?」「一番働きやすい環境はどんな環境か?」「集中しやすい環境はどんな環境か?」「どのようなコミュニケーションスタイルが一番好きか?」など、まずは自分で整理しておいたり、チームでお互いに伝えあったりする機会をつくるだけで、お互いに目に見えないことに気が付くきっかけになるだろう。
目に見えづらい障害のある人の工夫はそういった仕組みの延長線上にある。そのベースが整っていない中、ただ「障害のある人のみにその人に合わせて工夫をする」のでは、ただの特別扱いになり定着しない。
3. 衝突が起きづらい仕組みと、衝突が起こることを前提とした仕組みをつくる
1と2のような共通言語づくりや自己認識と自己開示の機会をつくることは、確実に衝突を防ぐ仕組みにはなるが、それでも衝突は必ず起きてしまう。
まずはそれ自体を前提にしておくことだけでも、衝突を恐れて行動ができなくなるようなことはなくなる。衝突が起きたとき、何かしらの困難さが起きたときの対応策を知っておいたり、仕組みがあったりすると良い。
例えば、以前視察したオランダの小学校※にはおもしろい仕組みがあった。そこでは、上級生になると、対立による衝突を解決することができる係になることができる。
その係になった子どもたちは、休み時間に黄色い帽子をかぶり、対立が起きた場面の時に呼ばれ、お互いが対話し建設的に解決できるようにファシリテーションをする。お互いの言葉を聞き、「お互いにどうしてほしかったのか?」を話し合う。それでも解決できないときは大人が間に入る。休み時間のみでなく、対立が起こったときには、彼らに予約をし、対話の時間を持つことができる。
例えばこのような仕組みがあると、衝突は起こるものという前提の共有と、怒ったとしても解決ができる経験をつくることができる。
※オランダのピースフルスクールの取り組み。
4. 多様性を活かす=完璧な人間を作ろうとしない、自分が完璧であろうとしない
最後に、ダイバーシティ&インクルージョンや多様性を活かすという言葉や、そういった組織づくりを考えるときに、自分たちとは異なる誰かの話をしている、と思っている人にはその考えをぜひ改めてほしい。
まさに、多様性を活かす組織は、これまで優秀と言われ続けてきた人ほど難しいのではないだろうか。自分のことを完璧だと思っている人ほど難しい。苦しいかもしれない。
多様性を前提とすることは、だれもが得意なことがあれば苦手なことがあると認めることであり、例えば役職が付いているからといって、その人が完璧であるわけではない、ということを認めること。むしろ完璧な人なんていないから、お互いに得意を活かしあおう、ということ。
自分自身が自分の苦手さや弱さを知り、そういう自分をカミングアウトすること、そしてそれを周りの人も寛容に見守ることそのものが、「多様性を活かす」組織づくりの一歩かもしれない。
連載:「インクルーシブな社会」の実現に向けて
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