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2018.07.05 07:00

日本の子供に金融教育が必要な理由

People Image Studio / Shutterstock.com

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ここ数年FinTech、つまり金融とテクノロジーの融合により金融サービスは劇的に進化してきた。クラウドファウンディングは金融機関を通さずに世界中から資金調達をすることを可能にした。銀行のような間接金融から、個人レベルでの直接金融へと、金融自体の在り方も変化している。

資産運用の世界でも、ネット上で数問の質問に答えるだけで、自動的にオススメの資産配分が提示され、自動的に運用してくれるロボ・アドバイザーが流行している。

では、人間はどうか?

ユニークな金融サービスが増えても、それを使いこなせなければ意味がない。ここでは、世界と日本の金融教育について、書いていきたい。

自立して生きる準備はできているか?

サービスには提供する側と受ける側がいる。金融業界が提供するサービスは、FinTechの登場により10年前に比べれば桁違いに「安い、早い、便利」が実現されてきた。しかし、サービスを受ける側にはほとんど進歩がない。なぜなら、今の日本では金融教育の体制がほとんどないからだ。

金融の知識は、自分の力でこの世の中を生き抜くために必要なものである。不安を煽る気はないが、少子高齢化や人口減少が進む日本において、私を含む20代や30代の人間は両親や祖父母の世代とは違う日本を生き抜かなければいけない。

老後資金は公的年金制度だけを頼りにしても大丈夫なのか? もし日本がデフレを脱却して、物価が上昇傾向になった時、このまま資産を現金・預金で持ち続けていてもいいのか? 将来の暮らしに不安を感じていても、誰に聞けば教えてくれるのか、何から勉強していけばいいのか分からず、結局疑問は疑問のままになってしまう人が多いだろう。

私は運良く子供の時から金融や経済の知識を学べる環境にあった。大学生になり、座学の知識だけでは意味がないと思い、株式投資に挑戦してみた。その後、社会人になるにあたり、これまでの経験や知識を活かすため、運用会社や証券会社でキャリアを築いた。

その間も毎日、新聞記事を切り抜いてはノートに貼り付け、自分なりの分析を書き込んだり、日々学習したりした。とはいえ、お金との出会いはごく普通のものであった。

大学生でアルバイトを始めた。アルバイトや株式投資など、少額とはいえ複数の収入源ができて、確定申告をしなくてはいけなくなった。

社会人になって1人暮らしを始めると、家賃や光熱費を給与の中からやり繰りし、残ったお金を趣味や貯金・投資に回した。社会人になると保険の勧誘があり、会社では確定拠出年金(401k)制度があるので、自分で運用するようにと説明書類を渡された。当時はスマホもなく、今ほどネットでなんでも調べるような習慣がなかった時代だ。周りの友人は初めて体験することに困惑したり、不安を抱えたりしているようだった。

比較的金融や経済の知識があった私は、この保険は入らなくていい、いまは株式比率を高めにして投資したほうがいい、これは経費として確定申告できるなど、自身で判断が出来た。だが、同世代の知人の中には、全く分からないからと何もしていなかったり、金融機関に勧誘されるままに契約したりしていた。場合によっては明らかに不適切な金融商品を購入ししてしまう人も多くいた。

金融の知識は武器にもなり、防具にもなる。生活の質の差に直結すると言っても過言ではない。それほど重要な金融知識へのアクセスが、家庭環境や各人の興味の有無に依存するようでは問題であろう。実際、海外に目を向けると小学校から“お金”を義務教育で教える国が出てきている。今後、英語やITスキルのプログラミングが小学生の必修科目になっていくのと同様に、金融教育も重視するべきというのが私の持論である。
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文=森永康平

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