なぜ、海外で金融教育が先行しているのか?
日本ではお金の話をタブー視されている傾向がまだまだある。一方で海外では既に広義での金融教育が実施されている国も多い。2008年のリーマンショック以降、世界では正しい金融知識を身につけようという機運が高まり、金融改革が行われた。そのなかのひとつが“金融教育”だ。米国ではNPOやNGO、英国では政府が主導して金融教育を推進している。
英国では多くの子どもが18歳の時点で非常に重い学生ローンを背負う事が多い。また、年金制度が確定給付型スキームから確定拠出型スキームに移行したことにより、個人の抱える金融リスクが高くなった。このようなこともあり、英国政府は、すべての子供が学校でパーソナル・ファイナンス教育を受けることを政策的な長期目標として掲げ、様々な取り組みを行っている。
また、米国では無計画にクレジットカードを使ってしまう若者や、退職後の備えが十分でない世帯が多く、このような状況を改善するために英国とは違いボトムアップで草の根的な金融教育が推進されている。
金融教育の普及は欧米などの先進国だけの話ではない。私が数年前にタイの証券取引所に行った際、子供向けの金融教育のテキストを目にし、非常に驚いた記憶がある。
複雑化する社会で資産を守るには
ここ数年、仮想通貨が話題になっている。特に金融の知識がなければ「そういうものが流行っているのか」といった感想しか抱かないだろう。または、中身をろくに理解しないままギャンブル感覚で投資してしまい、思わぬ損失を被ることもあるだろう。
また個人レベルの話だと金融詐欺の話が見逃せない。ATMや金融機関のHPを見ると、必ず詐欺についての警告を目にする。また上記の仮想通貨絡みの詐欺の件数も増加している。日本はもともと他国に比べて金融詐欺の件数が多いと言われる。これは個人レベルで詐欺かどうかの判断ができる金融知識の基軸がないからではないだろうか。
「金融」と一言で言っても、それは投資だけを指す訳ではない。金融の知識を持つことで、詐欺などの被害から身を守り、自身で資産運用をすることで経済的余力を生み出し、お金の悩みから開放されるのが最終目標だ。また未来の子どもたちがもっと自由に新しい生き方の選択肢を考えるためにも金融知識は必要不可欠なのだ。
米国や英国と比較すると既に約10年のブランクが開いてしまっている日本の金融教育。次回は、そのブランクが、実際の個人資産にどの程度の影響を与えるのかを説明したい。