無脂肪乳を使ったミルクソースは、バターの残りの素材を使ったとは思えない濃厚さ
このような素敵な循環があるお菓子ですが、肝心の味はどうなのでしょうか? それがまた、「ふわっ、シャリ、とろっ」という3つの食感が楽しめて、非常に美味しい。バターが香る生地から芳醇なミルクのうまみが溢れ出し、とてもバターの残りものから生まれたとは思えません。なんでも、北フランスの伝統菓子、ゴーフルをイメージしているといいます。
「お土産3.0」的イノベーション
この「バターのいとこ」のレシピ開発をしたのは、東京・代々木上原の人気レストラン「PATH(パス)」の後藤裕一氏。フランスの三ツ星レストランでキャリアを積んだトップパティシエです。
たまたま牧場でこの話をしていたところに居合わせ、「一緒になんとかしましょう」ということでプロジェクトにジョイン。こうした問題意識を現場で共有したクリエイターとのコラボもまた、このお土産の完成度を高めたといえるでしょう。
ただポップを作って打ち出すのではない、ショップ inショップのようなコーナー作りもまた秀逸
「Chusは地域の生産者さんとのつながりで成り立っているので、生産者さんが困っていることがあれば少しでも解決したい」と常々考えているという宮本氏には、この成功モデルを軸に、まわりを巻き込みながら社会全体の課題を解決したいという心意気もあります。
「このプロジェクトを介して多くの人に無脂肪乳のことを知ってもらい、結果的に無脂肪乳の価値が上げられれば、社会の課題解決にもつながるのではないかと思います。だからオープンソースじゃないですが、同じような軸のモノづくりは、どんどん他の地域にも広がってほしいですね。社会全体で課題に取り組むことで、僕たちを取り巻く環境が少しでも良い方向に向かえばと思っています」
お土産というのは、誰かから誰かに贈るもので、現地の産業やイメージを発信していくというメディア的な要素もあるもの。そこに、この「バターのいとこ」のストーリーがあると、贈る側も受け取る側もさらに広めたくなる、という好循環もありそうです。
地方創生において起こるべき「お土産3.0」的イノベーションのヒントは、「バターのいとこ」のように、課題解決から生まれ、生産者も、観光客も、地域の人々も、さらには受け取り手も笑顔になれることにあるのではないでしょうか。
連載 : クリエイティブなライフスタイルの「種」
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