しかし海外には、それを楽しみながら実現できる仕組みがありました。オランダで見つけたプログラムを紹介します。
“体験”が詰まったオーガニック農場
今回訪れたのは、アムステルダムから車で2時間ほど東へ行った場所にある「ホフ・ヴァン・トウェロ」というオーガニック農場。12ヘクタール(東京ドーム約2.5個分)の敷地には、レストランやファーマーズマーケット、キャンプ場などが併設されており、一般の人も気軽に立ち寄ることができます。
ここでは食事やショッピングだけでなく、農場内を裸足で歩きまわるベアフットトレイル(足の裏本来の感覚を呼び覚ます運動)を体験したり、オーガニックやパーマカルチャー、食用の野草についての講義で学ぶこともできます。
左上からファーマーズストアの建物、野菜以外にも雑貨や種なども販売、同農場が出版している本、貸し農園コーナー
さらに興味深いのが、この農場の貸し農園で行われている活動です。
貸し農園といえば、農家さんから借りた農地を週末に手入れし、できた野菜を自分たちで収穫して食べるというのが一般的。このホフ・ヴァン・トウェロも基本的には同じシステムですが、育てた野菜を、“農場側で販売してくれる”という点が他と大きく異なります。
利用したことがある人ならご存じかと思いますが、貸し農園でも、個人では食べきれないくらいの野菜が収穫できます。それをそのままにしてはもったいない。ここでは、その食べきれない分を販売して、売り上げの50%を生産者に還元してくれるのです。
フードロスが解消され、ちょっとした経済効果も生まれる。なかなか素晴らしい仕組みです。しかも農場側もこの取り組みによって、農地の手入れに必要な人件費の2割を抑えることができているといいます。
オーガニックのトマトが1kgで約580円とかなりリーズナブル。
住民も含め「三方良し」のシステム
農園を借りる人は、週末に土いじりをして体を動かしたり、自然の中でリフレッシュし、収穫したオーガニック野菜を食してウエルネスを実現。さらに野菜を販売してちょっとした収入が得られる「パラレルワーク」を実現し、自分が地域社会の良い循環に貢献しているという誇りも感じることができる。
農場側は、ファーマーズマーケットやレストランの利用で売り上げが確保できると同時に、農作業が減ることで人件費をセーブ。また、人が集まることによるコミュニティ形成もしながら、地域の小さな経済圏の中心として社会へも貢献できる。
地域の住民は、農場が行うさまざまなプログラムに参加したり、顔が見えるオーガニック食材を気軽に購入したり。時にはレストランでゆっくりと食事を楽しむこともできる。ホフ・ヴァン・トウェロではまさに、“三方良し”が実現されているのです。