思い返せば10年ほど前、ベイスターズは最下位が当たり前。球場に足を運んでも、観客より“空席”の方が多かったほど。まさに暗黒時代。そんな球団に飛躍の兆しが見え始めたのが2011年、親会社がDeNAになり、球団名が横浜DeNAベイスターズに変わってからだ。
「コミュニティボールパーク」化構想から、横浜スポーツタウン構想へ
球団がまず着手したのが、横浜スタジアムの“内側”を中心とした改革。2013年度に「コミュニティボールパーク」化構想を掲げ、横浜スタジアムと協力し、座席の色をチームカラーの青(横浜ブルー)に統一したり、「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」などのイベントを多数行ったりした。
2018年シーズンを前に、横浜スタジアムの座席の色はすべて青色になった (c)YDB
こうした取り組みの効果もあって、観客動員数は右肩上がりで成長。2016年シーズンは過去最高の193万9146人を記録し、観客動員数は2011年シーズンと比べて175.9%もの成長を遂げた。
この盛り上がりを球場内だけでなく、横浜の街全体へと広げていきたい。そんな思いのもと、「コミュニティボールパーク」化構想の拡大版として、2017年1月に「横浜スポーツタウン構想」を打ち出し、横浜市と「I☆YOKOHAMA 協定」を締結。さらには、同構想の拠点となるTHE BAYSをオープンし、「I☆YOKOHAMA」を合言葉に、“スポーツ”を軸とした街づくり、産業創出を推進していくことを決めた。
2017年3月にオープンしたTHE BAYS (c)YDB
そんな横浜DeNAベイスターズは2017年11月9日、スポーツ・エンターテインメント分野で事業を行うベンチャー企業・スタートアップと提携し、新たなスポーツ産業の共創を目指す新事業「BAYSTARS Sports Accelerator(ベイスターズ・スポーツ・アクセラレータ)」を開始すると発表した。
なぜ、この共創に乗り出すことにしたのか。そして、どのような狙いがあるのか。同事業の責任者を務める横浜DeNAベイスターズ経営・ IT戦略部の林裕幸氏に話を伺った。
スポーツ産業を生み出す“仕組み”が必要だった
横浜DeNAベイスターズ 経営・IT戦略部 部長 林 裕幸氏
──「横浜スポーツタウン構想」を打ち出してから約1年。球団は黒字化も達成し、2017年シーズンの観客動員数は過去最多の197万9446人、座席稼働率も過去最高の96.2%を記録するなど、2016年に引き続き好調でした。そうした中、新事業を始めることにした経緯は何だったのでしょうか?
林:端的に言えば、横浜の街にスポーツ産業を生み出していくための“仕組み”が必要だと感じたからです。「横浜スポーツタウン構想」について簡単に説明すると、この構想は我々、横浜DeNAベイスターズだけでなく、行政組織と民間企業の3者で相互に連携し、横浜市にスポーツ産業を生み出し、拡げ、根付かせていくことを目的に始めたものです。
「横浜スポーツタウン構想」の考え方 (c)YDB
行政組織とは「I☆YOKOHAMA 協定」を締結するなど、日々お付き合いがあるのですが、民間企業とパートナーになる機会がなかなかない。民間企業と接する場を設けるべく、THE BAYSの2階に「Sports×Creative」をテーマにした会員制シェアオフィス&コワーキングスペース「CREATIVE SPORTS LAB」をつくり、企業やクリエイター、エンジニアなどとコラボレーションできるようにしたのですが、それだけでは足りないな、と。
「横浜スポーツタウン構想」の実現に、何より必要なのはスポーツ産業を生み出すこと。それをスピード感持って進めていくためには、場ではなく仕組みが必要。だからこそ今回、ベンチャー企業・スタートアップと提携し、新たなスポーツ産業を共創していくための仕組みをつくりました。それが、BAYSTARS Sports Acceleratorというわけです。
THE BAYSの2階にある「CREATIVE SPORTS LAB」 (c)YDB