仮想通貨に関するデータを提供するコインマーケットキャップ・ドット・コムによると、ビットコインの価格はおよそ1か月で約41%下落。その結果、世界中で取引されている仮想通貨全体の時価総額は、約50%減少している。
仮想通貨を取り巻くここ5年ほどの状況とは、大きく異なる様相だ。2012年12月にわずか15ドル(約1600円)前後で取引されていたビットコインは、昨年12月には2万ドル近くにまで高騰。ビットコイン以外の多くの仮想通貨も今年に入り、数日のうちに価格が2倍になるほどの伸びを見せていた。
強まる圧力
だが、先ごろ報じられたところによると、中国の規制当局は自国民に対して今後、国内だけでなく世界中のどの場所でも、仮想通貨の取引を行うことを禁止する方針だという。インドも規制を実施すると見られている。
また、モバイル決済の米ストライプは1月、ビットコインによる支払いの受け付けを終了すると発表した。その他にもマイクロソフトを含む少なくとも4社が、電子商取引事業での支払いについて、同様の方針を明らかにしている。
米国ではバンク・オブ・アメリカ、シティグループ、JPモルガン、キャピタル・ワン、ディスカバーが、クレジットカードでの仮想通貨の購入を禁止した。さらに、2月4日には英ロイズ・バンキング・グループが、同様の措置を取ることを明らかにした。
同行の広報担当者はロイター通信に対し、「ロイズ銀行のほかグループ内のスコットランド銀行、ハリファックス、MBNAなどが発行する全てのクレジットカードを使用した仮想通貨取引が対象」だと話している。
クレジットカードのビザは先月、欧州でビットコインのデビットカードを発行していたWaveCrest(ウェーブクレスト)との提携を解消すると発表。また、ロンドンでは貸付業務を行う金融機関の一部が、仮想通貨で資産を保有する人への住宅ローンの承認を見送ったことが分かっている。ローンの返済を仮想通貨に頼ることがあれば、銀行はあまりにも大きなリスクを背負うことになるというのが理由だ。
大手銀行は当初から、ビットコインに否定的だった。従来からある銀行のビジネスモデルを根本的に覆す可能性があると恐れたのだ。だが、金融機関は仮想通貨の存在を可能にしているブロックチェーン(分散型台帳)技術についての知識を深めており、すでにビットコインの必要性を感じなくなったとされている。
市場縮小で価格も下落
仮想通貨に対する“包囲網”が敷かれつつある中で、仮想通貨は市場全体が縮小している。需要が減れば、価格は下落する。そして、不満を抱える投資家は増加している。最近になって新たに投資した人たちは、損失を被っただけだ。仮想通貨に投資しているのは大半が個人で、中国、シンガポール、日本、韓国の投資家が多くを占める。
コスタリカの資産管理会社、ミレニアアセットマネジメントのファンドマネージャーは、「ビットコイン価格は、2500ドルまで下がると思う」「それ以下になるかもしれない」との見解を示す。同社の創業者は、投資家たちのためにはストップ・ロス(損切り)のためのプログラムが必要との考えだ。
仮想通貨はこれから、“ファインプレー”を見せるのだろうか。それとも、包囲網に屈することになるのだろうか。ビットコインに対する激しい逆風が、吹き荒れている。