テクノロジー

2017.11.11 12:00

NHKがAI野球解説「ZUNOさん」を作った理由

NHKとDentsu Lab Tokyoが共同開発した「AI野球解説 ZUNOさん」

NHKとDentsu Lab Tokyoが共同開発した「AI野球解説 ZUNOさん」

今年のプロ野球日本一を決める日本シリーズは、大接戦の末、ソフトバンクの優勝で幕を閉じました。実はその裏で、もう一つの熱い戦いが繰り広げられていたのですが……その戦いとは「人工知能VS全野球ファン プロ野球!投球予測バトル」です。

2017年春、NHKは「AI(人工知能)野球解説 ZUNOさん」を、Dentsu Lab Tokyoと共同企画・開発しました。ZUNOさんは、2004年から記録されている300万球を超えるプロ野球の打席データを、ディープラーニングの技術を応用して学習することで、配球などを予測したり、膨大に蓄積されたデータを解析するデータマイニングを応用することで、これまで人間の解説者では見つけることのできなかった選手の傾向や試合状況に応じた投球の解析を行うことができます。

そのZUNOさんと、日本シリーズを舞台に「投球予測バトルをしようぜ!」というのが今回の企画の主旨です。チェスや囲碁、将棋ではすでにやっていますよね、人類VS人工知能って。それの野球版です。



日本シリーズに先立って、プロ野球や米メジャーリーグで活躍した元投手の高橋尚成さんや福岡ソフトバンクホークスの熱烈なファンとして知られるお笑い芸人の博多華丸さんと対戦したところ、僅差でZUNOさんが勝利しました(高橋さんの球種正答率35.55%、博多華丸さん34.78%に対して、ZUNOさんは38.29%)。

10月29日。日本シリーズ第2戦。NHKBS-1の野球中継を見ながら、僕もスマホを片手にZUNOさんと対戦です。1球1球、球種とコースを選んでいくのですが、これがけっこう難しい。僕だって小学校の頃は野球に胸を熱くしていました。当時は巨人の大ファンで、毎日野球中継を見ていましたし、原辰徳の引退試合にも行って、広島カープ紀藤投手から打った382本目のホームランに野球の優しさを垣間見たりしていました。

その後FA制度で各球団の4番ひしめく球団になってしまい、僕の心は巨人から離れてしまいました…ってそんな話はどうでもいい。全然、僕の予測が当たりません。中学校からはSLAM DUNKにはまって、バスケに燃えてしまったからだろうか、いや、やはりFA制度のせいで野球から心が離れてしまったあの時期が問題なんじゃないか、いやいや、そんなことはどうでもいい。20球やって、1球もあたらないってどういうこと??

と、僕はここで対戦を放棄。一応、僕もZUNOさんの開発初期段階に携わった、企画者の一人なんですけどね。でも、義務感でやるほど僕はできた人間じゃないぞ。っていうか、完全に心が折れました。普通に試合を見終わった後、「この企画すっげーいいと思ったけど、なかなかハードル高いよな」とやさぐれていたら、共同企画開発者の田中直基さん(Dentsu Lab Tokyo)から連絡が。

「小国さん、4500人が参加して、ZUNOさんに勝った人が4人でました」。って、嘘だろ!すごいな、野球ファン。

結果を見てみると、

■球種正解率:参加者平均32.32% ZUNOさん47.07%
■コース正解率:参加者平均13.20% ZUNOさん19.15%

(※それぞれ50球以上予測した人が対象)

となっていて、ZUNOさんに勝った4人の猛者の中には、球種正解率が60%、コース正解率20%超という人も。

結果もさることながら、これだけ熱狂的に参加してくれた人たちがいたんだということに、僕は素直に驚きました。この企画は、もっと伸ばせる。野球中継やスポーツ観戦の新しい楽しみ方を生み出せる可能性がある。結果を見て、そんなふうに思いました。
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文=小国 士朗

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