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ニュースワイヤーの一本

Photo by Chip Somodevilla / Getty Images

米国で内戦(the civil war)といえば、南北戦争(1861〜65年)を意味するが、トランプ大統領と米メディアの戦争が、新たな「内戦」と呼ぶべき様相を呈している。双方は敵意と憎悪をむき出しにし、修復不可能な状態だ。

アフリカや中米国を「肥溜め(shithole)」と侮辱するなど、トランプ氏の傍若無人ぶりは周知の事実だが、ニューヨーク・タイムズ紙やCNNテレビといった大手主要メディアは、2016年の大統領選で「エスタブリッシュメント(既得権益層)」の一員として見做され、コアなトランプ支持者たちに一切信用されていないことが弱点となっている。

11月の中間選挙に向けて、大統領とメディアが世論形成にどこまで影響力を行使できるかが勝負の分かれ目となりそうだ。

1年で大統領の単独記者会見は1回

歴代大統領とメディアの関係は必ずしも良好だったわけではない。ただその中でも、トランプ氏の敵意は群を抜いている。今年1月17日、就任1年(同20日)を前に「フェイク(偽)ニュース賞」を発表。主要メディアを「最も不誠実で腐敗し、ねじ曲げられた政治報道」とこき下ろした。

一方のメディア側はこれに先立ち、政権の暴露本『炎と怒り』(マイケル・ウルフ著)を大々的に取り上げ、トランプ氏の精神状態や能力への懸念を連日報じていた。

先の大統領選の序盤、トランプ氏とメディアの力関係は、メディア側が圧倒的に強かった。特にテレビは泡沫候補と見られていたトランプ氏の動向を、面白半分に、かつ批判的に取り上げて笑いの種にした。

しかし、トランプ氏が共和党候補の指名を受けるころになると、状況は一変する。トランプ陣営は取材を制限し、露骨にメディアを選別した。トランプ陣営は「反エスタブリッシュメント」や「反ワシントン(エリート)」を旗印にしていく過程で、メディアを打ち負かすべき既得権益に位置付ける。ここにトランプ氏がメディアを叩けば叩くほど、支持が高まるという構図がつくりだされた。

メディア側は、共和党寄りの地方有力紙のみならず、ファッション誌「ヴォーグ」や全国紙「USAトゥデー」が不偏不党の方針を返上し、「トランプ不支持」を表明。大統領選当日まで「トランプの敗北」を伝えたが、結果は大きく外れた。

公平を期するなら、米国の主要メディアがこれまで「特権的な立場」を享受してきたことは否定できないだろう。彼らはホワイトハウスの記者会見室の前列に陣取り、大統領報道官とのやりとりを独占する。席に座れず後方に立っている筆者のような「外国人記者」は手を上げ続けても滅多に指されないが、大手テレビの記者はカメラに自らの雄姿を収めるためにライバル社が既に聞いた質問でもあえて繰り返す。

トランプ氏が大統領に就任した後の満員電車のような記者室で、スパイサー報道官(当時)が各社のエリート記者を平然と無視し、名もなきメディアの記者を指すのには小気味好さを感じたくらいだ。

文=水本達也

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