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2018.01.07

生産性を高められない日本の「盲点」

Ned Snowman / Shutterstock.com

相次いで発表されたメガバンクの人員削減。少人数で、品質を保つには、生産性の向上が欠かせない。フィンテック先進国・アメリカを例に、「生産性革命」の本質を問う。

銀行業界の人員削減計画が話題だ。10月28日、みずほFGが、今後10年程度で、1.9万人の人員削減を計画していると発表した。6万人規模から4万人規模へと縮小する。三菱東京UFJも、今後10年程度で、1万人規模(7%相当)の人員削減を計画していると発表。いずれも、人員削減は、IT活用、フィンテック活用、店舗削減によるもの。アメリカでは既に進んでいる金融の効率化が、ようやく日本でも動き出す。

かつてのアメリカの銀行業は、小規模店舗が多数あり、煩雑な小切手の決済など、非効率な産業だった。それが、いまでは、残高確認、クレジットカードの毎月の支払いばかりではなく、送金もインターネットを使って、ごく簡単におこなえるようになり、小切手をつかうことも、銀行の支店にいくこともなくなった。日本の銀行の支店が、客も銀行員もあふれているのは、アメリカと比べれば異様に見える。

一方、総選挙が終わり、再びアベノミクスに関心が集まっている。与党で3分の2の議席を確保したことから、安倍晋三総理が憲法改正を目指して経済政策をないがしろにするのではないか、という観測もある。

しかし、私は、改憲と同時にアベノミクスもさらに推進させ、高い支持率の継続を目指す、と考えている。第4次安倍内閣発足後の11月1日の記者会見で、当面の重点課題として、安倍総理は、「人づくり革命」と、「生産性革命」のふたつを挙げた。その推進のため、年内に平成29年度補正予算案を編成すると表明。

では、生産性革命とはどのように位置づけられているのだろうか。「生産性革命」が最初に登場したのは、2015年6月に閣議決定した「日本再興戦略・改訂2015」。サブタイトルは「未来への投資・生産性革命」であった。そのなかでは、「未来投資による生産性革命」のためには、1.「稼ぐ力」を高める企業行動を引き出す、2.新時代への挑戦を加速する、3.個人の潜在力の徹底的な磨上げが必要であるとし、具体的な施策が提言された。

日本の生産性にはどれくらいの上昇の余地があるのだろうか。図1は、産業別生産性の日米比較である。アメリカよりも生産性が高いのは、化学と機械であり、遜色がないのは、輸送機械である。情報通信業の生産性は、アメリカの4分の3程度。アメリカの生産性の半分にも満たないのが、金融、運輸業、卸売・小売業、飲食・宿泊である。金融の生産性が劣っているのは、いかにも納得できる。


しかし、日本が先進的であると信じる人たちは、金融業・運輸業・小売業・飲食業などでは、日本の方がよほど、サービスが正確かつ迅速、高品質、おもてなしの精神にあふれていて、満足度が高いと指摘する。
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文=伊藤隆敏

この記事は 「Forbes JAPAN 日本の起業家 BEST100」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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