キャリア・教育

2017.12.18 16:40

トランプ辞任の可能性? 2020年までに起こりうる事態

ドナルド・トランプ(Photo by Pool / Gettyimages)

ドナルド・トランプ(Photo by Pool / Gettyimages)

ドナルド・トランプは、今年1月にアメリカ大統領就任以降、数多くの論争に巻き込まれている。そのため、彼がいつまで大統領でいられるのか疑問視する識者は多い。トランプの行動は予測不能なため、今から2020年の大統領選挙までの3年間に何が起こるか予想するのは難しい。ただ、以下の事態が予測できる。

第1に、トランプが大統領を辞任する可能性は低い。長いキャリアで、彼は常に「勝者」をたたえ、「敗者」を侮蔑してきた。彼が「敗者」と呼ぶのは、彼が最も軽蔑に値すると考えている、例えばテロリストのような人々である。

他方、彼は「勝者」を賞賛し、自分が「勝っている」と他人に言うのが常である。このような彼の精神構造を考えても、彼が4年の任期途中で自発的に大統領を辞任することは考えにくい。なぜなら、自分が「敗者」と批判される可能性があるからだ。

第2に、トランプ自身および彼の側近のロシアとの関係について、現在ロバート・ミュラー特別検察官(元FBI長官)が指揮している調査である。この調査で、トランプと彼の家族にとって好ましくない事実が明らかにされる可能性が高いが、その結果、大統領1年目としては最低レベルで、すでに40%を割っている彼の支持率がさらに下がるかもしれない。

第3に、18年11月の中間選挙がトランプにとって望ましくない結果となる可能性がある。上院では、民主党が多数派となる可能性は低いが、下院では可能性がある。上院では、100議席のうち、民主党が多数派となる51議席を獲得するためには、今回改選対象33議席のうち、現在の25議席を守ると同時に3議席増やす必要がある。ところが、現在の25議席のうちの10州ではトランプが昨年11月の選挙で勝っている。この事実を考えると、これは不可能ではないが、かなり難しい。

他方、下院の状況はより流動的である。トランプの支持率が18年の中間選挙の時に40%を下回っていれば(現在は33〜38%)、下院で民主党が多数派を占める可能性が高いと予測するアナリストは多い。そうなれば、下院の民主党がトランプに対して弾劾手続きを開始することになろう。

弾劾の理由は、多岐にわたる。例えば、1.16年の大統領選挙に勝つためのトランプ陣営とロシア政府との共謀、2.司法省、FBI、その他が真実を明らかにするのを妨げるために、ジェームズ・コミーFBI 長官を罷免したことを含む司法妨害、3.人種的に中南米系を標的にするジョー・アルパイオを恩赦した(彼は裁判官の「中南米人を人種的に標的にするのはやめるように」との命令を無視して、法廷侮蔑罪に処された問題の多い保安官である)、4.大統領の公的地位を利用して、トランプ一族が利益を享受し続けている「利益相反」などである。

とはいえ、弾劾手続きの開始は大統領職罷免を保証するものではない。実際、アメリカの歴史上、弾劾手続きによって大統領が罷免された例はない。それは、弾劾には下院投票の過半数と、上院の3分の2の投票が必要という高いハードルが設けられているからである。

アンドリュー・ジョンソンとビル・クリントンは弾劾されたが、上院で無罪とされた。リチャード・ニクソンは、辞任を強制される前に自ら辞任した。しかし、弾劾手続きが開始されると、ホワイトハウスはそれにエネルギーや関心を割かざるを得ず、政権後半2年間での大幅減税などの政策目標の達成は難しくなるだろう。

最後に、米国憲法第25条は、副大統領と閣僚の過半数(少なくとも24の閣僚のうちの13人)が、「大統領が職務遂行能力を欠く」と判断すれば罷免できると規定している。大統領がこの決定を受け入れない場合、上下院双方の議会の投票によって議員の3分の2の得票があれば罷免可能である。

つまり、トランプが現在から来年11月の中間選挙までに“何らかの出来事”によって自発的に辞任する可能性は高くはないが、状況によっては19年、20年の政権後半には、トランプ政権の優先課題の実行能力が著しく低下することになる可能性は高い。

文=グレン・S フクシマ

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