ビジネス

2017.08.04 12:30

米国クラウドファンディング王者が、ゲイツ財団を超える日


当初はペイパルに支払金を分割する機能がなく、ふたりは寄付ごとの手数料を差し引くことができなかった。収穫の乏しい初年度のあいだに、創業者ふたりは、慈善団体には定期契約ベースのサイト利用を促し、サイト運営者としての手数料は無料とすることで、市場シェアを確保した。

09年にペイパルが支払金を分割できるようになり、活路が開ける。安定した収入が流れ込み、外部出資に頼ることなく成長を続けられるようになった。サイト名を「ゴーファンドミー」に改めたのは10年のことだ。

14年後半、ゴーファンドミーはVC「アクセルパートナーズ」のジョン・ロック(32)の目に留まる。ロックは300人を対象に、個人的な理由のために資金集めをするならどのサイトを使うかというアンケートを取った。すると、95%がゴーファンドミーの名を挙げた。「そのビジネスは、創業者であるブラッドとアンディの想像以上にうまくいっていた」と、ロックは語る。

15年7月、ふたりの創業者はアクセルパートナーズらに過半数の株を売却し、経営の一線から退くことに同意した(現在でも役員ではある)。企業評価額は6億ドル。CEOにはアクセルパートナーズのソロモンが就いた。「はじめてゴーファンドミーを見たとき、そこで起きていることに、ただただ呆然とした」と、ソロモンは言う。

「キャンペーンの数や利用者の数に目を疑ったよ」

「正しい寄付」とは

ゴーファンドミーにおける最大のカテゴリーは、医療費だ。15年に集められた15億ドルの寄付のうち、医療に関連するのもは4億ドルを占めた。とはいえ、同サイトが仲介する寄付金のなかで、税控除が認められるのは、サンフィリッポ症候群の基金宛てのものなど、ほんの一握りに過ぎない。集まる寄付金は、平均して1件1000ドル。18秒に1件、新たな募金キャンペーンが投稿される。 

ゴーファンドミーに寄付をする人々は、こうしたキャンペーンが「本物」なのか、あるいは、小道具とカメラを持った役者が演じる詐欺行為なのかを、どのようにして見分けたらよいのだろうか。ゴーファンドミーによれば、「詐欺的なキャンペーンは0.1%しか成功しない」という。

「正しい寄付」へのフィルタリングとして、ゴーファンドミーは多くの施策を講じている。支払いを処理する「ウィーペイ」と連携し(ペイパルとは11年に袂(たもと)を分かった)、寄付金の受取人の身元と銀行情報を確認する。他人のためにキャンペーンが立ち上がるケースも多いが、実際に寄付金が支払われるのは、発起人と本人との関係性が確認できた場合だけだ。

また、昨年10月からは、発起人による悪用や詐欺が発覚した場合、寄付者に最大1000ドルを返金する保険システムも導入した。そのほか、集まったお金を発起人が本人に渡さなかった場合は、ゴーファンドミーが最大2万5000ドルを本人に寄付することも誓約している。

募金内容の規制もある。人種や性別を含む10の基準に照らして、テロ行為、憎悪や不寛容を助長するようなキャンペーンは掲載されない。ただ、これらの基準は時として解釈が難しい。
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翻訳=町田敦夫 編集=杉岡 藍

この記事は 「Forbes JAPAN No.37 2017年8月号(2017/06/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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