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2017.03.23

クラウドファンディングは「ベンチャー投資のあり方を破壊する」

Gettyimages

アメリカで施行された新法は、スタートアップを量産するだけでなく、VC業界を“破壊”するかもしれない。

アメリカでイノベーションを加速する新法が昨年6月に施行された。2012年、バラク・オバマ大統領が署名した新興企業による資金調達の規制を緩める「JOBS法(Jumpstart Our Business Startups Act)」の第3章である。

この“クラウドファンディング条項”により、スタートアップは不特定多数の人々から小口資金を集められるようになった。「クラウドファンディング」とは、趣旨に賛同した人々からインターネットを通じて特定の目的を達成するために出資を募るサービスで、 以前からキックスターターやインディゴーゴーなどが人気を集めていた。

ただ、出資を受けた側は見返りとして株式を提供することはできず、あくまでプロダクトやプレゼントという形でしか報酬が出せなかった。なぜなら、それまでは、純資産100万ドル以上、または年収20万ドルといった要件を満たす「Accredited Investor(適格投資家)」でなければ、スタートアップに投資ができなかったからだ。
 
それが今回の法改正の結果、スタートアップは一般の人々からも、オンライン・ポータルを介して株式と引き換えに100万ドルまで資金を調達できるようになったのである。

「ネット上なら投資家と会いやすく、資金調達が簡単になる」と語るのは、投資型クラウドファンディングサイト「Crowdfunder(クラウドファンダー)」の共同創業者、レイフ・ファースト(48)だ。
 
ファーストは法改正の実現につながった、ロビイング活動をした一人である。アメリカ初の投資型クラウドファンディングサイト「ProFounder(プロファウンダー)」に出資したものの、当時は“グレーゾーン”だったこともあり、同サイトは閉鎖を余儀なくされた。多くの起業家やベンチャー投資家にとってビジネスチャンスが閉ざされるのを見て、規制を緩める必要性を感じたという。
 
そして新法が施行されたいま、クラウドファンディングは「ベンチャー投資のあり方を“破壊”する」と彼は考えている。
 
サイトに十分な投資データが集まれば、閉鎖的なベンチャー投資の世界に「透明性」がもたらされ、将来的にはより効果的な起業やより確実な投資ができるようになるというのだ。すでにクラウドファンダーでは、過去の実績をベースに投資モデルを構築。主にシード期のスタートアップを対象とした「VCインデックス・ファンド」を運用している。

ファーストは、「VCは集団としてはとても優秀」と認めつつも、「起業家と投資家の間の力学が変化している」と指摘する。

「ウーバーがタクシー業界を、エアビーアンドビーがホテル業界を“破壊”してきたように、今度はVCが、自ら投資してきたテクノロジーにより“破壊”されるかもしれません」

[4通りのクラウドファンディング]

-報酬型
最も一般的なクラウドファンディングの形態。プロジェクトやサービスの趣旨に賛同した利用者が少額出資し、見返りにプロダクトやギフトを受け取る。代表的なサービスに、キックスターターやインディゴーゴーなど。

-寄付型
利用者が見返りや報酬をいっさい求めない完全な寄付型のクラウドファンディング。社会起業家や、チャリティ関連のプロジェクトが対象となることが多い。代表的なサービスに、GoFundMe(ゴーファンドミー)やCrowdRise(クラウドライズ)など。

-貸付型
起業家がローンを組む形で資金調達できるクラウドファンディングの形態。出資者に対して利息を支払う方法のため、起業家は自社株を手放さずに済む。代表的なサービスに、LendingClub(レンディングクラブ)やProsper(プロスパー)など。

-投資型
投資家が株式と引き換えに出資できるクラウドファンディングサイト。2016年5月のJOBS法第3章施行により、適格投資家以外の一般人にも解禁された。代表的なサービスに、クラウドファンダーやWefunder(ウィーファンダー)など。


レイフ・ファースト◎投資型クラウドファンディングサイト「クラウドファンダー」の共同創業者。スタンフォード大学でコンピュータ科学の修士号を取得。ポーカーサイト「フルティルトポーカー」の初期投資家で、自身も世界トップレベルのポーカープレイヤー。

文=井関庸介

この記事は 「Forbes JAPAN No.32 2017年3月号(2017/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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