だがその背景をひも解くと、商業用不動産や技術投資、日本経済といった、一見互いに無関係にも思える世界金融の側面が見えてくる。本記事では、こうしたパズルのピースを順番に検証していきたい。
1. 存在感を増す代替融資
商業用不動産業界では昨年、商業用不動産担保証券(CMBS)融資の鈍化によって生じた溝が、ブラックストーンなどの代替融資業者によって埋められた。
CrediFiによるニューヨーク市場のサンプル分析によれば、第3四半期における商業用不動産融資の13%が、銀行以外の金融機関トップ10社によるものだった。トップ5にはブラックストーンの他、SLグリーンなどの不動産会社が含まれる。
ニューヨークに本社を置くフォートレスもまた、2015年にマンハッタンでのホテル建設計画に1億900万ドルの建設ローンを発行するなど、商業用不動産融資を行っている。ソフトバンクによる買収は、代替融資業者の役割の拡大と価値の増加を改めて示す事例とも言えよう。
2. 「最大の投資会社」目指すソフトバンク
ソフトバンクが立ち上げた1000億ドル(約11兆3000億円)規模のIT投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」には、同社から250億ドル、サウジアラビア政府から450億ドルが出資される他、アップル、クアルコム、オラクルの3社もそれぞれ10億ドルを出資すると伝えられている。
これは全て、テクノロジー業界で「最大の投資会社」になるという孫正義社長の目標に向けた取り組みの一環だ。孫は、米国への500億ドルの投資と5万人の雇用創出も誓約している。
またロイター通信は先月、ソフトバンクが子会社のスプリントとドイツテレコム傘下のTモバイルの合併実現を目指し、スプリントの経営権をTモバイル側に譲渡することを検討していると報じた。
これとフォートレス買収、SVF立ち上げを合わせれば、ソフトバンクはインターネット・通信事業の直接経営から距離を置き、投資事業へと軸を移しているとも考えられる。投資対象としては、テクノロジー分野はもちろん、商業用不動産などの分野も含まれるだろう。