キャリア・教育

2016.11.27 10:30

【対談】ハーバード流「挑戦し続ける力」

猪俣武範氏(左)と木ノ内 輝氏(右)

猪俣武範氏(左)と木ノ内 輝氏(右)

ボストンには今、医療テックの新風が吹いている。西海岸一辺倒だったテック系ベンチャーへの投資が近年東海岸の都市でも盛り上がりを見せており、中でもボストンは医療テックの分野において“ヘルスケア版シリコンバレー”と呼べるような一大拠点になりつつあるというのだ。

医師として留学中にMBAも取得した眼科医・猪俣武範と、在学中に手掛けた作品でボストン国際映画祭・最優秀撮影賞を受賞した木ノ内輝。ハーバード大で研究者同士として出会ったふたりが、アメリカきっての学園都市・ボストンでの学びを振り返る。


猪俣武範(以下、猪俣):同級生ではないのですが、同じ時期にハーバード大学のスケペンス眼科研究所で学んでいました。木ノ内さんは当時から、帰国したら研究は辞めて映画をやると言っていて、その通りに映画会社を立ち上げた。

研究者としての業績を捨てて全く新しいことに挑戦するなんてすごくチャレンジングだなと思ってましたが、何が決心させたんですか。

木ノ内輝(以下、木ノ内):「共有できる芸術」を作りたいという想いです。もともと医学と並行して、美術の勉強もしていました。でも、芸術ってどうしても自己満足になってしまうところがあって、一番共有しやすい芸術は何かと考えた結果、辿り着いたのが映画でした。

フィルムからデジタルへの変換により、映画製作のコストはすごく下がりました。加えて、共有のされ方や可能性も大きく変わってきています。映画界はまだそれが上手く生かされていないので、切り込んでいきたいと思ったのです。

猪俣:保守的な業界に、技術で変革をもたらそうとしている。まさに「映画界のテスラ」の呼び名の通りです。

木ノ内:猪俣さんも非常に多岐にわたる、しかも先端的な活動をされていますよね。

猪俣:僕は今、医療におけるインターネット化について考えています。Internet of Medical Things=IoMTという概念です。医療デバイスにインターネットを付加することで患者さんにとって有益なサービスを提供したり、医者が診療しやすくなる環境を作りたいという構想です。

木ノ内:最近ではアプリの開発もされたとか。

猪俣:その一環ですね。Appleが提供する医学研究のためのオープンソース・フレームワーク「ResearchKit」を活用し、“ドライアイリズム”というアプリを開発しました。ドライアイや眼精疲労と生活習慣の関連性を明らかにするのが目的で、ドライアイという症例では世界初です。

このアプリを使うと、ユーザーはまばたきの回数測定などのゲームを通じてドライアイの測定をすることができる。そして研究側は、そのデータを集めることができます。



これまでは症例を集めるのが難しく、例えば月1回の外来のタイミングしかなかったのが、このアプリによってiPhoneを持つ全ての人にリーチでき、被験者になってもらえる。ドライアイの症状と生活習慣がひもづけられたデータが一気に取得できるんです。
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写真=岩沢蘭

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