--事業化当初、技術面での懸念はありませんでしたか?
確かに、「無理だ」「できっこない」という声はありましたね。ところが、プロジェクト立ち上げに当たって実現可能性を調査すると、話を聞いたエンジニアたちが皆、「実現できる」と口を揃えて答えたのです。
私自身も、「あらゆる問題には、必ず何かしらの解決策がある」と考えています。問題は、どれが“最適解”か、です。
そして、技術よりもむしろ「ビジネスモデル」のほうが大きな課題でした。じつは、利益を上げている鉄道会社はありません。すべて、政府の補助金で経営を賄っているのです。例えば、ロサンゼルス郡都市圏交通局が運営する近距離鉄道では乗客1人当たり76セントの収入がありますが、同時に納税者から2ドル50セントも支払われています。
明らかに改善の余地があるにもかかわらず、公共交通機関には“競争”がないために然るべき進化をしていません。
だから、私たちは技術的な面だけではなく、経営の面でも実現可能なソリューションを考える必要がありました。そして何よりも、「どうすれば、グーグルやフェイスブック、世界の一流教育機関で働き、学ぶ人々に関心を持ってもらい、一緒に解決策を考えてもらえるか?」ということです。
--その答えのひとつが「オープン・プラットフォーム」にして賛同する人からアイデアを募る、と。
私たちは、自分たちのアイデアの上でさらなるイノベーションを起こしてほしいと考えています。考えを共有する開かれた文化ならそれが可能です。
アイデアの共有もですが、テクノロジーを使って顧客により良いユーザー体験を提供することも可能です。
例えば、子供のころ、バス停で待っていると、満員のバスに続いてやたらガラガラのバスが来たことがあったりしませんでしたか? 今日のテクノロジーならば、こうした混雑は難なく解消できます。交通機関は混み具合に応じて価格を変えることが可能ですし、利用者も時間や自分の懐具合と相談しながら乗るバスを選ぶことができるわけです。
席を予約する際、隣客の評価を知るシステムだって考えられるでしょう。評価の低い人を避けることで、利用者はより快適な旅を送ることができるようになります。