社会問題も解決する「ハイパーループ」構想の全貌

Wang An Qi / shutterstock

少し前まで、空飛ぶ自動車や超音速鉄道はSF映画の産物だった。だが今、次々と企業が開発に向けて乗り出している。問題は「技術」にではなく、違うところにあるのかもしれない。

2013年8月、宇宙開発企業「スペースX」のイーロン・マスクCEOが、音速で走る超高速鉄道「ハイパーループ」構想を発表した。「真空チューブの交通網を使って、サンフランシスコとロサンゼルス間を時速1,200kmで乗客を運ぶ」という革命的なアイデアは多くの賛同者を得た。そのひとりに、ダーク・アルボーンがいる。現在は「ハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジーズ」(HTT)のCEOを務める彼が、ハイパーループを開発するうえでの課題と、その可能性について語った。

--「ハイパーループ・プロジェクト」を立ち上げた経緯とは?

2012年ごろ、私は非営利のクラウド型インキュベータ「ジャンプスタートファンド」の経営に携わっていました。そのころ、クラウドファンディングサイトの「キックスターター」が注目を集めるようになって、人は本当に情熱を抱くことに対しては、惜しみなく時間や資金、エネルギーを投じることが明らかになりました。また同年、アメリカで「JOBS Act(新規事業活性化法)」が成立し、一般の投資家もクラウドファンディングができるようになりました。

こうした動きの背景について考えてみると、私たちは仕事やコミュニケーションのほとんどをネット上でしているにもかかわらず、会社づくりはいまだにアナログな方法だということに気づいたのです。つまり、私たちはまだインターネットの力を十分に活かしきれていない、と。

すると、13年にマスクが「ハイパーループ構想」をぶち上げました。仮説を証明するのにうってつけのアイデアだと考え、スペースXに許可を得たうえで、私たちのインキュベータで事業化の是非をコミュニティに問いかけたのです。

--その年の秋には法人化しました。

思いのほかに反響が大きく、わずかな間に200通以上の応募があり、今では社員は520人以上、コミュニティの規模は全世界で2万〜3万人になるほど大きく育っています。

カリフォルニア州クエイバレーで線路の敷設が始まり、19年の開通を目指しています。最近では、スロバキアとも契約を結び、首都ブラチスラバで公共交通機関を運営する話も進んでいます。
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文=Forbes JAPAN編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.23 2016年6月号(2016/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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