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放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。

飛行機は飲食もできるし、ひとつ屋根の下的な連帯感も強いし、中身の濃いミーティングができるはず! (illustration by Yusuke Saito)

放送作家・脚本家の小山薫堂が「有意義なお金の使い方」を妄想する連載第9回。バー、レストラン、料亭と、飲食業にひととおり携わってきた筆者がサロンの有意義性と食の可能性について、あらためて考えてみた。

以前「タワシタ」という短篇を書いたことがある(講談社文庫『フィルム』に収録)。環七沿いのバーが営業不振に陥り、店主が都内に引っ越そうと考える。店を行きつけにしていたグラフィックデザイナーの主人公は、東京タワーの下(ふもと)に元・自動車修理工場という店舗物件を見つけて店主に紹介、かつ店主に頼まれてオーナーにもなるという話。説明不要かもしれないけれど、東京タワーの下にあるからバーの名前は「タワシタ」とした。

実はこれは半分くらい本当の話で、10年ほど前に僕は、東京タワーの下にある自動車修理工場を改装したバー「ZORRO」のオーナーになった。バーの名をタワシタにできなかったのは、グラフィックデザイナーの長友啓典(けいすけ)さんのせいである(笑)。店名のロゴをお願いすると、快く引き受けてくれたのだが、「タワシタは厭や。ゾロがええなあ」と言う。「ゾロって何ですか?」「怪傑ゾロのゾロや」「何か意味があるんですか?」「意味はないけど、Zで始まるのがいいんや」と、タワシタはあえなく却下された。

しかし翌年、ZORROの上階が空き店舗となったタイミングで、友人の会社経営者のAさんがアザブハウス元店長のSさんを連れてきて「ふたりで店をやろうと思うのだが、手伝ってくれないか」と言うではないか。僕たちは3人でオーナーとなって、ビストロ「タワシタ」をオープンした。長友さんはこのときも「前はZで始まったから、次はAがええなあ」と言ったのだが、「いや、今回はタワシタ以外は受け付けません!」と頑張りとおした(ちなみにZORROは改装を経て現在は「月下(げっか)」に名を変え、タワシタとともに絶賛営業中。現オーナーの詳細についてはここでは割愛します)。

前置きが長くなったが、僕がバーのオーナーを引き受けたのは、正直いうと成り行きだった。しかし、引き受けるからには僕なりの楽しみというか、アイデアがあった。そのバーを、人や文化が集まり、互いに刺激しあって、新たに発信していく場所にしたいと考えたのだ。おかげさまでいろんな職種のおもしろい人が集まって、互いに仕事相手になったり、かけがえのない友人同士になったり、豊かな文化交流がもたらされた。

なかでもちょっとだけ自慢なのが、バーの壁面を担当した飛騨高山の左官職人、挾土(はさど)秀平さんのことである。その見事な壁を気に入った方はとても多く、はからずも”挾土秀平のショールーム”的な役割を果たしたようで、その後、彼はザ・ペニンシュラ東京のロビーエントランス、北海道洞爺湖サミット会場のゼロエミッションハウス、羽田空港国際線ファーストクラスラウンジ、現在放映中のNHK大河ドラマ『真田丸』の題字など、素晴らしい仕事を手がけた。人と人の縁を取り持つ場所、それがこのバーのいちばんの存在価値なのである。

イラストレーション=サイトウユウスケ

 

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