欧州

2025.02.28 11:30

車両欠乏のロシア軍、輸送にロバや馬も使い始める

Shutterstock.com

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いや、ロシア兵がホバーボードに乗って戦闘に入ろうとしている証拠はまだない。ホバーボードは2輪のおもちゃの立ち乗りスクーターで、実際は浮遊(ホバー)するわけではないものの、内蔵するジャイロスコープによって乗り手のバランスをとりながら走行する。

とはいえ、ウクライナに対する3年におよぶ全面戦争の間に装甲車両だけで1万2000両近くも失ったロシアが、それでもウクライナで軍隊が動き続けられるように、あれやこれやの窮余の策を講じているのは確かだ。

だからロシア兵は次はホバーボードに乗って突撃か、と思いそうになる人がいても仕方ない。23日、ネット上に出回った動画には、ロシア兵がカラフルなホバーボードを軍用トラックに積み込む様子が映っていた。「運転するものがなくなったら……」と笑いながら話す人の声も聞こえる。

だが最もありそうなのは、ロシア兵がウクライナの民間人からホバーボードを盗み、それを「戦利品」として、あるいは昨年登場した実験的な無人車両のベースに使うために、持ち帰ろうとしているところだった、というものかもしれない。ウクライナの雪に覆われ、荒れた地形の戦場では、ホバーボードは使い勝手のよいものではなく、それならむしろ歩いたほうがずっと効率がいいだろう。

補足しておけば、多くのロシア兵は現在、まさに徒歩で戦闘に赴いており、なかには足を引きずりながらそうする者もいる。現代的な車両が欠乏しているロシア軍の歩兵部隊は、徒歩で攻撃するのが常態になってきている。少し運が良ければ民生用の小型車に乗る機会にあずかれるだろう。現代的な装甲輸送車に乗れるのは、最も運が良い兵士だけだ。

ロシア軍の兵站部隊も車両が不足しており、最近は戦闘部隊への補給にロバも活用するようになっている。戦線のロシア側ではの目撃例も増えている。

ロバによる輸送は、実のところ米陸軍もアフガニスタンでの長い苦難の間に時おり行っていた。また、米海兵隊は極限の状況を想定し、動物を輸送手段として運用する制度を整えている

ただしロシア軍の場合、たんに輸送に動物を使うのが効果的な荒れた地形に出くわしたからロバの運用を試している、というようなことではないだろう。ロシア軍はもっと広く動物を使おうとしており、これもまた、甚大な代償を伴っている戦争が4年目に入るなか、ロシア軍で拍車がかかっている「脱機械化」の表れなのは明らかだ。

ロシア軍の脱機械化の影響は、ウクライナでの進軍ペースが鈍化していることにもはっきりと認められる。ホバーボードの映像を見て、ロシア兵がそれに乗って戦闘に向かうと想像した人がいるほど、ロシア軍の輸送車両不足は深刻なのだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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