ロシアがウクライナに対する戦略ドローン(無人機)攻撃作戦のギアを一段と上げている。月に4000機を超えるドローンを送り込み、ウクライナのエネルギーインフラや集合住宅などを襲撃している。今後、イラン設計の「シャヘド」やロシア製の「ゲルベラ」などの量産が加速するにつれて、飛来数はさらに増えそうだ。
ウクライナは、攻撃してくるシャヘド型ドローン(以下「シャヘド」)を統合防空システムで可能な限り撃退しているものの、飛来数があまりに多いと圧倒されかねない。ロシアは新たな戦術も導入しており、それによって突破率は高まっているもようだ。
だが、状況は変わりつつある。ウクライナの防空戦力はシャヘドを阻止するための主な手段を、従来の地対空兵器から新世代の迎撃ドローンに切り替え始めている。
大きな問題は「数」
シャヘドは性能に関しては第一次世界大戦期の航空機のようなところもあり、「モペッド(原付)」というあだ名の由来である特徴的なエンジン音を響かせながら、時速190kmくらいでのろのろ飛んでくる。撃墜すること自体はそれほど難しくない。問題は数だ。
ウクライナは米国などから供与されている少数のパトリオットや、その他雑多な防空ミサイルを保有しているが、毎月数千機というシャヘドを撃墜するには数がまるで足りない。シャヘドの製造コストは1機3万ドル(約430万円)程度で、ロシア製のほかの攻撃ドローンやデコイ(おとり)機はもっと安い。パトリオットは1発およそ400万ドル(約5億7000万円)する。F-16戦闘機などが発射する空対空ミサイルも同様に、有効だがいかんせん数が少ない。
そのためウクライナが頼りにしているのが、主に対空砲や機関銃で武装したさまざまな車両に乗る900ほどの機動防空チームだ。これらのチームはサーマルイメージング(熱画像)カメラを装備し、何よりも、ドローンを追跡するセンサー群のネットワークに接続されている。各チームはゆっくりとした動きのシャヘドの飛行経路に沿って配置に就き、近くまで来たところで撃ち落としている。