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アジア

2025.04.17 08:00

信頼揺らぐ米国債 トランプの「政策カオス」、アジアの我慢も限界に

Shutterstock.com

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先日、ニューヨーク─東京便の機内で、元日銀当局者とたまたま一緒になった。数々の修羅場を踏み、まさに何もかも見てきたというふうなベテランだ。1997年のアジア通貨危機、1998年のロシア・デフォルト(債務不履行)、2008年のリーマン・ショック、2013年のテーパー・タントラム、ドナルド・トランプ1.0政権、そして新型コロナウイルス禍──。在職中、彼はこれらすべてを経験した。

当然、アジアを揺るがしているトランプ2.0貿易戦争についてどう思うか尋ねた。彼は「どうしても『ファー・サイド』を思い浮かべてしまうんだ」と冗談めかして答えた。ファー・サイドは、擬人化された動物などが登場するゲアリー・ラーソンの懐かしいコマ割り漫画だ。

具体的に言えば、旅客機のパイロットを描いた作品だという。パイロットは初めに、これから乱気流に入りますと乗客に警告する。ところが続くコマでは、パイロットが操縦桿を前後左右にぐいぐい動かし、機体をわざと揺らして楽しんでいる。

「いまは乗客がわたしたちで、操縦桿を握るのがトランプというわけだ。トランプは自分で大混乱を引き起こしておもしろがっているんだよ」と彼は話した。「だけど、アジアにしてみればたまったもんじゃない」

たまったものではないと感じているのは債券投資家も同じだろう。だとすれば、トランプによるさらなる「乱気流」の影響はいたるところに広がりそうだ。これは米国がみずから引き起こしている混乱であり、長年、米政府の「身の丈」を超えた財政運営を中心になって支えてきたアジアの中央銀行など金融当局の間には、裏切られたという感情が芽生えつつある。

何年も、いや何十年も、日本や中国、韓国などの当局は米国債をまめまめしく購入してきた。それがいま変わろうとしている。米国債はなお特別で金融の重力の法則が及ばないものなのか、どの国の投資家も疑問を抱き始めているのだ。

トランプは短期間で米国債の神聖さを脅かした。その結果、日本や中国からドイツまで、各国の政府は保有する巨額の米国債の安全性について案じるようになっている。

米政府は長年、アジア諸国からの米国債への需要を当然のものと考えてきた。だが、トランプは米国の指導者として初めて、アジア諸国の金融当局の忍耐を直接試している。これ自体、現在のホワイトハウスははたして世界の安定に関心があるのか、疑念を生じさせる振る舞いだ。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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