司法試験に合格できるほどの巨大AIモデルや、そこそこの詩をつくれるAIモデルがメディアの注目を集める一方で、別のタイプの知能が静かに根を下ろし始めているようだ。
いわゆる「ソフトAI」とは、近似推論(編集注:「真」か「偽」の二値論理ではなく、あいまいさを含む情報から結論を導き出すための推論手法)やパターン認識、柔軟な意思決定を用いて特定の狭いタスクを実行するように設計されたAIシステムを意味する。曖昧さを受け入れることで、人間のような思考を模倣することを目指している。
しかし、これは今日のビジネスにとってどのような意味を持ち、なぜ注目に値するのか。
ソフトAIとは
ソフトAIの中心には、人間の認知を反映する原理がある。世界は二進法的には割り切れない、という考え方だ。人間は0と1だけで決断を下しているわけではなく、不完全なデータを前に疑念を抱えつつ、文脈を踏まえて判断する。ソフトAIは、この複雑さを反映しようとする。
産業向けリスク検知やヘルスケア診断にAIを活用しているグリーンバース・パートナーズのCEO、バドル・エル・ジュンディはこう語る。
「ソフトAIは力ずくの計算だけではなく、むしろ適応性や近似、そして人間的な推論を重視するものです」。
ジュンディはこれを、タスク指向で目標を追求する「エージェント型AI」とは異なる柔軟な知能だと位置づける。不確実性を考慮し、人間が行うように曖昧さを取り扱うシステムだという。グリーンバースのシステムは大規模な基盤モデルに依存せず、小規模なニューラルネットワーク(編集注:間の脳の神経細胞、ニューロンの仕組みを模した数理モデル)にファジィロジック(ファジィ論理)の要素を組み合わせることで、現実世界の信号をニュアンス豊かに解釈できるように設計されている。
では、このファジィロジックとは何で、なぜ今注目されているのか。