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2025.04.18 12:00

人間のように考える「ソフトAI」、あいまいさを理解する小さなAIモデルの大きな力

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ファジィロジックの定義

ファジィロジックは1960年代に導入されたコンピューティングの概念で、厳密一辺倒ではなく現実世界に適応しやすい知能システムを目指すものだ。従来の論理が真偽を白か黒かに割り切るのに対し、ファジィロジックでは世界を「イエスでもノーでもない中間領域」として扱う。たとえばシステムが「70%安全で30%危険」と判断するなど、単なる「正常」「異常」では語れない微妙な度合いを表現できる。こうしたニュアンスこそが、実社会では大きな違いを生む。

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もっとも、ファジィロジックはグリーンバースのアプローチの一部にすぎない。ジュンディはこう続ける。

「当社ではファジィ推論に加え、ニューラルネットワークを使った学習アーキテクチャや適応型の信号モデル(編集注:環境や条件の変化に応じて自動的にパラメータを調整し、最適化を行う信号処理の手法)を組み合わせています。これは人間の意思決定プロセスに近いものです」

これは産業、安全の分野のようにノイズを多く含む信号を解釈し、リアルタイムで応答しなければならないケースや、初期症状のパターンが微かで見落とされやすいヘルスケア領域で特に重要になる。

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ジュンディによればグリーンバース・パートナーズは、この領域で強みを発揮しているという。

「ヘルスケアでは、生体信号が時間とともにどのように変化するかを重視します。産業用途なら、環境圧力、流量、振動パターンを中心に見るのです。基盤は共通化していますが、データモデルはドメインに合わせて特化させています」

目的特化型のAIシステム

ソフトAIの台頭は、OpenAI(オープンAI )のような企業が推し進める「より大きいモデルほど性能が上がる」という考え方に異議を唱えるものだ。ジュンディによれば、規模を拡大しても重要インフラや緊急医療のようにリスクが高い現場では、明確な成果に直結しない場合があるという。

「安全性が優先される環境では、規模よりも精度や説明可能性、応答の早さが重視されることが多いのです。小規模で目的特化型のシステムはカスタマイズが利き、解釈もしやすく、信頼性で巨大モデルを上回り得ます」

この見解は、デロイトが2024年に発表した調査結果とも一致している。高リスク環境でAIを利用する組織のうち42%が、汎用モデルではなく小規模でドメイン特化型のモデルを選好すると回答している。主な理由はテストや検証、説明が容易だからだ。

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翻訳=酒匂寛

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