4月10日、ホワイトハウスが各省庁に対して2026年度予算の草案を送付し、NASAの次年度予算が大幅に削減される可能性があることをArs Technicaなど在米メディアが伝えた。これに対して各方面から深刻な懸念が示されている。
米行政管理予算局(OMB)が各機関に送付した草案「パスバック」は、一般に公開されるものではない。ただし関係者からの情報によると、NASAの次年度の総予算は20%カットされる見込みで、なかでも科学プログラムに対する減額が著しく、昨対比で50%削減を予定。これは昨年度予算の75億ドルから39億ドルに抑制されることを意味する。
科学プログラム局に対する予算の内訳としては、天文物理学の予算が3分の1に削減されて4億8700万ドル(約701億円)に、太陽物理学が3分の1以下に減額され4億5500万ドル(約655億円)になるほか、地球科学への予算は50%以上の削減で10億3300万ドル(約1490億円)、惑星科学は30%減の19億2900万ドル(約2780億円)となる予定。
この草案が通れば、2026年10月以降に打ち上げ予定の赤外線宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン」は、その計画中止がほぼ確定する。同機は次世代のNASA宇宙望遠鏡計画の主幹を担うもので、ダークエネルギーや系外惑星(太陽系以外に存在する惑星)の解明を担う計画。その主要部位はすでに完成状態にあり、 現在はNASAの一機関であるゴダート宇宙飛行センターで組み立て作業中だ。この計画にはJAXAを中心とした日本の研究チームも参画している。

また、2029年に打ち上げが予定される金星探査機「ダヴィンチ」への資金も停止されることになる。NASAは1989年の「マゼラン」以降、金星の近接探査を行っていないが、40年振りに予定されるこの金星探査機も存続される可能性が低い。