さらに、「MSR(Mars Sample Return)」ミッションも停止される可能性が高い。これは火星探査ローバー「パーサヴィアランス」が採取した岩石などを地球に持ち帰るための計画。当初は2027年から28年の打ち上げが予定され、成功すれば史上初の火星サンプルリターンとなるはずだった。しかし、サンプル回収着陸機、火星上昇機、地球帰還オービターなど、役割が異なる複数の機体を連携させる複雑なミッションであることから、計画自体の進捗が大幅に遅延している。2024年10月までに代替案が策定されるはずだったが、現時点においてもそのプランは公表されていない。
ゴダード宇宙飛行センターが閉鎖される可能性
今回のパスバックでさらに衝撃的なのは、NASAの主要機関であるゴダード宇宙飛行センターを閉鎖するプランが含まれることにある。
NASAはワシントンD.C.にある本部のもと、マーシャル宇宙飛行センター(ロケット開発、アラバマ州)、ケネディ宇宙センター(打ち上げ施設、フロリダ州)、ジョンソン宇宙センター(有人宇宙飛行の管制・訓練、テキサス州)など、全米各地に10カ所の主要フィールドセンターを擁する。
そのなかでゴダード宇宙飛行センター(メリーランド州)は、天文、惑星、太陽、地球観測などの研究において中核となる組織であり、無人観測衛星や宇宙望遠鏡の開発や管制なども担う。宇宙望遠鏡ナンシー・グレース・ローマンや金星探査機ダヴィンチも同機関が主導するプロジェクトだ。
今回の予算削減案の対象とされるプロジェクトに、ゴダード宇宙飛行センターが主導するものが多く含まれるのは、この施設を閉鎖する意向がトランプ政権にあることを意味する。もしこの施設が閉鎖されれば約1万人におよぶ職員や契約者は、他の施設へ移動されるか、もしくはレイオフされる可能性がある。
たしかにNASAにおける予算超過は、長年にわたって問題視されてきた。10カ所のフィールドセンターの傘下にはさらに155の施設があるが、その20%が十分に稼働していないことを、NASA監察総監室(OGI)が2013年に指摘している。ただし、これらの組織を整理しようとすれば、既得権益を持つ団体や雇用を守ろうとする議会がその動きを阻もうとするため、歴代のNASA局長は対処できない状態にあった。しかし、トランプ政権のまえではそれらの抵抗勢力も一掃されようとしている。


