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経済・社会

2025.04.09 18:15

トランプ関税戦争に電光石火の反応、ベトナムを助けた北朝鮮との縁

ベトナム共産党のトー・ラム書記長(Photo by Andres Martinez Casares-Pool/Getty Images)

ベトナム共産党のトー・ラム書記長(Photo by Andres Martinez Casares-Pool/Getty Images)

トランプ米政権による「相互関税」の第2弾が日本時間の9日午後1時1分に発動した。中国への追加関税が発動済みと併せて104%になるなど、先行きの全く見えない展開だ。このなかで、いち早く動いたのがベトナムだった。ベトナムは米国の国別赤字額で中国、メキシコに次ぐ第3位で、46%の相互関税を課された。

この危機に際し、ベトナム共産党のトー・ラム書記長は4日、トランプ大統領と電話会談し、米国の対越輸出品への関税を撤廃する考えを示した。ファム・ミン・チン首相は7日の声明で、「安全保障や防衛における米国製品の購入を増やし、航空機の早期調達も進める」と明らかにした。トー・ラム氏はトランプ氏に関税発動を少なくとも45日間延期するよう要請する書簡を送り、5月末には訪米したい考えを示した。訪米したフック副首相は今月9日午後(日本時間10日未明)、ベッセント財務長官と会談する。

ようやく石破茂首相が7日にトランプ氏と電話協議し、8日に米関税措置に関する対米交渉の担当閣僚に赤沢亮正経済再生相を指名した日本とは段違いのスピード感だ。国民民主党の玉木雄一郎代表もX(旧ツイッター)で「ベトナムのトップの動きは早い」とつぶやいた。

ベトナムと米国は30日、ベトナム戦争終結50周年を迎える。かつての仇敵だ。今年7月12日は米越国交正常化30年でもある。両国は2023年9月、両国関係を包括的パートナーシップからベトナム外交上最高位の「包括的戦略パートナーシップ」に格上げした。ベトナムが急速に米国との関係を強化したのは、中国という共通の脅威があったことや、中国に生産拠点を置いていた西側企業の「退避先」としてベトナムの価値が上がったことなどが挙げられる。

ただ、それだけを考えれば、日本は米国の同盟国だ。ベトナムの並外れた「反射神経」の背景には、さらに別の事情があると米越関係に詳しい外交筋は語る。それは、2019年2月にベトナムの首都ハノイで行われた米朝首脳会談にあるという。ハノイでの会談について現地で調整役を担ったのがベトナム公安省であり、16年から24年まで公安相だったトー・ラム氏だった。外交筋は「この時の縁でトー・ラム氏周辺とトランプ氏周辺に強力なチャンネルが築かれたようだ」と語る。

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文=牧野愛博

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