だからといって、これらの政策自体が問題でないというわけではもちろんない。トランプは3月、FRBが政策金利を据え置いたあと、すかさず批判した。米国のインフレ率が4%近くとなお不快な高さなのにもかかわらず、ジェローム・パウエル議長に利下げという「正しいことをする」よう求めた。
トランプは2017年から21年までの1期目にも、FRBに対して早く頻繁に金融緩和を行うよう圧力をかけた。トランプ1.0のチームはパウエルの解任さえちらつかせた。現在のトランプ2.0の一味は、FRBに国際的な信認を与えている独立性を制限するとも騒いでいる。
トランプ2.0は関税に加え、通貨戦争も仕掛けたくてうずうずしているようだ。トランプは3月、中国と日本の指導者に対して近隣窮乏化政策をとらないよう警告したと述べた。
「わたしは(中国の)習(近平)国家主席と日本の指導者たちに電話をかけて、あなたがたは自分たちの通貨を引き下げ、損ない続けることはできないと言った」とトランプは説明した。「なぜなら、それはわたしたちにとって不公平だからだ。日本や中国、その他の国々が彼らの通貨を弱くする、つまり押し下げていると、キャタピラーがここ(米国)でトラクターをつくるのはとても難しい」
トランプは、米政府の対応は貿易面での締め付け強化になるかもしれないと言及した。「こうしたことが積み重なっている。それをとても簡単に解決する方法が関税なのだ」
トランプは過去に、米国の製造業を後押しするためにドル安を検討する考えも示している。第1期政権で米通商代表部(USTR)代表を務めたロバート・ライトハイザーを含むトップアドバイザーらは2024年4月、ドルの切り下げにも踏み込んだ計画をほのめかし始めた。
ライトハイザーの首席補佐官だったジェイミソン・グリアが現政権のUSTR代表になっているいま、ホワイトハウスがドルの価値の一方的な引き下げに動く可能性について、少なくとも考慮はしておくのが賢明だろう。