人工知能(AI)を搭載した遠隔セキュリティ技術を開発するスタートアップのHakimo(ハキモ)は、SNS上で同社のツールが警備に役立った事例を公開している。ある監視カメラの映像には、学校のバスケットボールコートに2人の若者が侵入し、スピーカーから流れる警告を無視している様子が映っている。すると、数分もしないうちに2人の警備員が到着し、彼らを敷地外に連れ出した。
「当社は、人間の警備員が常駐するものと同等のセキュリティサービスを、格段に安いコストで提供している。私たちが開発したインテリジェントなAIエージェントは、かつてないほど脅威を理解して対応することができる」と、Hakimoの共同創業者でCEOのサム・ジョセフは話す。サンフランシスコを拠点とする同社は3月27日、新たに1050万ドル(約15億7000万円)を調達したと発表した。
Hakimoにとって、今は最適なタイミングだと言える。米国の警備業界は人手不足に直面しており、最近の調査によると、警備会社の3分の1以上がコロナ禍前の水準まで人員を増やせていないという。その一方で、米国の多くの地域では犯罪率が上昇している。
Hakimoが開発したソフトウェアは、多くの企業や家庭が設置済みの監視カメラにリンクすることができ、AIエージェントが全てのカメラからのフィードを同時に監視し、侵入者やその他の脅威を検知する。同社のテクノロジーは、異常を検知すると予め設定したプロトコルに従い、例えば不法侵入者に対して音声で警告を発して、現場から立ち去るよう促すといった行動を起こす。また、委託先の警備会社に問題を通知したり、Hakimoの社内チームが介入し、緊急サービスを要請することもできる。
「我々は、抑止から検知まで、警備員が提供する全ての業務を遂行することができる」とジョセフは言う。彼は、スタンフォード大学で実世界にインパクトを与えるAIアプリケーションの開発に一緒に取り組んでいたサガー・ホンヌンガーと5年前にHakimoを設立した。「映像とAIを組み合わせて大きな変化をもたらす可能性があるのは、セキュリティ分野だと感じた」と彼は話す。
Hakimoは、最初の数年間は製品開発に専念していたが、この2年ほどでビジネスを軌道に乗せ始めている。顧客数はこの1年だけで3倍に増え、100社以上が同社のソフトウェアを使用している。Hakimoがターゲットにしているのは、自動車ディーラーや製造業、不動産業など、侵入者や窃盗犯から狙われやすい企業だ。