4.「計画を進めながら、改善策を検討しよう(We’re building the plane while flying it.)」:混乱状態にあるプロジェクトを、イノベーションの過程にあると表現したいときに頼りになる言い回しだ。このフレーズを使うと、機敏な動きを激励する一方で、誰もちゃんとした計画をもっていないことを、遠回しに認めることにもなる。
5.「その件については意識している(It’s on my radar.)」:コミットについては言及せずに、「何かを認識している」と伝えて安心させる、漠然としたフレーズだ。要するに「その件があることは認識しているが、優先度はかなり低い」という意味だ。
こうしたフレーズは、本質的には悪いものではない。単なるツールだ。ただし、どんなツールでもそうだが、意図的に使わなくてはならない。こうしたフレーズを頻繁に口にしている人は、こう自問自答してみよう。「自分は明確さを生み出しているのか。それとも、居心地の悪さを回避しているのか」と。
「正直さ」こそ真の力
問題になるのは、こうしたフレーズそのものではない。こうしたフレーズをきちんと意識せず、自動的に反応して口にしている場合だ。
そうする気もないのに「後でまた検討しよう」と言ったり、「後でまた個別に話そう」と言ったまま放置したり。「常に情報を共有するよ」と言っておきながら、共有しなかったりしていると、チームメンバーからの信頼を失う恐れがある。
リーダーも人間であり、混乱することもある。確信がもてないことばかりで、話の途中で何かに気がつくこともしょっちゅうだ。頭の中には付箋がたくさん貼り付けられている。実を言えば、チームメンバーはリーダーからすぐ答えをもらえることを期待していない。彼らがリーダーに期待しているのは、答えを本気で見つけ出そうとする姿勢だ。
定番のフレーズを何も考えず口にするのをやめ、もっと根拠のある発言を心がけよう。
・「それは素晴らしい指摘だ。もっと時間をかけて検討し、金曜日までに返事をする」
・「自分には確信がもてないから、しかるべき人に相談してから連絡するよ」
・「今は保留にして、あとで個別にフォローアップしよう。この件については、十分に時間をかけたい」
優れたリーダーシップを実現するために大事なことは、何を言うかだけではなく、発言した後にどう行動するかだ。確かな影響力をもったリーダーがいる環境では、「後でまた検討しよう」といったフレーズは言い逃れではない。熟慮の上で明確なコミュニケーションをとる、という約束だ。
最も強いリーダーとは、会話で最も速く反応できる人間ではない。より良い答えが現れる余地を設ける人間だ。