世界で最も稼ぐスポーツリーグはNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)かもしれないが、大リーグ(MLB)は今年、「1シーズンで1億ドル(約150億円)以上稼ぐ選手」という1つのマイルストーンでNFLを超えることになる。しかも、2人いっぺんにだ。
フォーブスの試算による今季の米球界年収トップは、ニューヨーク・メッツの外野手フアン・ソトの推定1億2690万ドル(約190億円、税引き前・代理人手数料込み)。続いてロサンゼルス・ドジャースが誇る二刀流の天才、大谷翔平も推定1億200万ドル(約153億円)で「年収9桁組」(1億ドル超え)の一員となった。これまでMLBの最高年収は、2023年の大谷の6500万ドル(当時のレートで約85億円)だった(なお、NFLではダラス・カウボーイズのクォーターバック、ダク・プレスコットの2024年の年収9630万ドルを超える選手は出ていない)。
この2人のスターは、まったく異なる2つのルートで画期的な年収を手にする。今オフのフリーエージェント(FA)市場で最も注目を集めたソトは、15年総額7億6500万ドル(約1146億円)の超大型契約でメッツに移籍した。26歳のスラッガーには今季、年俸4690万ドル(約70億円)に加え、7500万ドル(約112億円)の契約ボーナスが支払われる。さらにエンドースメント(スポンサー契約)収入として500万ドル(約7億5000万円)が上乗せされる。
大谷の場合、年収の内訳はほぼ正反対だ。昨オフにドジャースと10年総額7億ドル(当時のレートで約1015億円)の大型契約を結んだが、その97%を2034年以降の後払いとしたため、それまでの年俸は200万ドル(約3億円)のみとなる。しかし、スポーツ史上最も収益性の高いスポンサーのポートフォリオのおかげで、今期はフィールド外で推定1億ドルを稼ぎ出すことになる。
ランキング3位に付けたのはドジャースと新たに契約したブレイク・スネルで、推定年収6560万ドル(約98億円)は大谷のこれまでのMLB記録を上回る。2025年の米球界年収ランキング上位10人の選手の年収総額は5億7600万ドル(約864億円)となる見込みで、過去最高を記録した2024年の4億6200万ドル(約693億万円)から25%増という驚異的な伸びを見せた。
それでも、ソトと大谷が最大の注目を浴びるのは当然だ。チームスポーツで年収1億ドルの大台を超えた選手は他に、米プロバスケットボール(NBA)のレブロン・ジェームズ、ステフィン・カリー、ヤニス・アデトクンボ、サッカーのリオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウド、ネイマール、キリアン・エムバペ、カリム・ベンゼマの8人しかいない。
スポーツビジネスコンサルタントで、南カリフォルニア大学非常勤教授(経営・組織学)のデービッド・M・カーターは「この手のマイルストーンは、記録と似ている」と指摘する。「コンテンツが急速に変化していて、配信され、収益化につながっていることを考えると、これらの記録はいずれ、予期せぬ形で破られる運命にある」