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2025.03.28 08:00

全米の「孤独な経営者」を救うコミュニティ、年会費45万円の値打ち

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ラーセンは、この人物のもとでしばらく学び、自らビジネスを買収する計画を立てた。しかし、15カ月後に買収に動き始めたものの、十分な資金がなかったため、新たな道を模索することにした。

そして2022年4月、彼は経営危機に陥ったあるビジネスオーナーと出会う。その人物は1800万ドル(約27億円)の売上を誇る業務用の空調機器の会社を買収したが、その直後に金利が急上昇し、建設業者からの仕事が減少。さらに見積もり担当者のミスで工数が膨れ上がり、最初の年で180万ドル(約2億7100万円)もの損失を出した。買収後の一時的な苦境もあったが、他の不運も重なり、彼は「破産するのではないか」と絶望していた。

孤立する経営者を救う

ラーセンは、その当時、セラピストになるつもりはなかったが、話を聞くうちに、この経営者を本当に苦しめているのが何なのかが見えてきた。「こういう悩みは従業員とは話せないし、経営者仲間にも相談しづらい」とラーセンは言う。その経営者は完全に孤立していたのだった。

そこでラーセンは考えた。この人を、同じような苦境にある経営者と引き合わせて、話をさせてみればどうだろうか、と。 彼はツイッターで数人の経営者を見つけ、彼らをビデオ通話に招いてみた。最初のグループは数週間ごとに集まり、ビジネスの話だけでなく、グループカウンセリングのような形になっていった。このときラーセンは気づいた。「これは単なる人助けではなく、ビジネスになるかもしれない」、と。

経営者をつなぐビジネスクラブというアイデアは、決して真新しいものではない。地域の商工会議所や業界団体のミートアップも、そのための場として存在する。しかし、これらの場では本音を語ることは難しい。同じ業界の競合が居る場所で、自分の弱点をさらけ出すことなど、誰もしたがらないからだ。そのため、ビジネスのリアルな問題について率直に語るためには、信頼関係と競争相手に情報を渡さないための地理的な分散が必要だとラーセンは考えた。

例えば先日のSMBコミュニティのミーティングでは、事業を買収する際の適切な買収額の算定や、フルタイムの幹部を雇う際の持ち株比率の問題、それが将来の企業価値にどう影響するかが話し合われた。こうした重要な議論は、将来的に自分のビジネスを買収しようとするかもしれない人々の前ではできないのだ。

また、たとえ安全な環境が整っていたとしても、メンバーの組み合わせが適切でなければ意味がない。これが、SMBコミュニティの価値の一部だ。ラーセンは、参加する経営者のビジネスモデルや売上規模を基準にグループを編成し、参加者同士が同じ課題を共有できるようにしている。各メンバーが、資金繰りの問題を解決したいのか、それとも単に悩みを聞いてほしいのかを把握して目的に応じたマッチングを行っている。

「みんな最初はボロボロの状態でやってくる。でも、何回かミーティングを重ねるうちに気づくんだ。『ああ、悩んでいるのは自分だけじゃないんだ』ってね」とラーセンは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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