経営者のコミュニティ
SMBコミュニティの初期からの会員の一人であるマシュー・サスキン(41)は、ノースカロライナ州で年間売上高が約900万ドル(約13億6000万円)規模のロードサービス企業East Coast Towingを経営している。彼は、この会社を3年前に、中小企業庁(SBA)の小規模事業者向け融資を受けて410万ドル(約6億2000万円)で買収したという。「このコミュニティのほとんどのメンバーが、SBAのローンを抱えている」とサスキンは語る。
彼は、地元の商工会議所のイベントにも時おり参加するが、そこでは自分と同じタイプの経営者には出会えないと話す。米国では近年、M&Aによる起業が注目されつつあるものの、全米で3300万社以上あるとされる小規模ビジネスの中では、まだ少数派だ。
これまでにラーセンのセミナーに参加した経営者は数百人に上るが、そのうち35人がネットワーキングメンバーとして登録した。各メンバーは、ラーセンや彼と提携するビジネスコーチが進行役を務める月1回のZoomのミーティングに参加し、経営戦略を共有し、経験を語り合い、互いを励まし合っている。
ワシントン州タコマの出身で、ボイジー州立大学で経営学を学んだラーセンは、自分でゼロから事業を作り上げるのが夢だったと話す。「自分に投資するなら、ある程度の予測がつく」と彼は言う。
ラーセンが大学卒業後に最初に務めたのは、工業用品のディストリビューターの会社だった。「非常に退屈だが、必要不可欠なものを扱っていた」と彼は振り返る。一方で、副業として医療用大麻のスタートアップに関わり、介護施設向けのセールスをしていた。しかし、彼の記憶に残ったのは大麻ではなく、介護施設のほうだった。
高齢者の介護分野で起業
2019年に彼は初めての事業として、高齢者が自分の人生のストーリーを語る動画を制作し、それを家族に提供するビジネスを立ち上げた。これは、祖父母が自分の生い立ちや人生の出来事を語る映像を撮影し、孫やひ孫が将来見られるようにするもので、「映像による家族の歴史記録」を作るサービスだった。
しかし、撮影のために被写体を説得するのが難しかった。「そのとき気づいたことは、消費者の行動を変えようとする革新的なスタートアップを立ち上げることもできるが、もっと身近なビジネスをするほうが着実な利益が上げられるということだった」とラーセンは言う。そこで彼は事業モデルを転換し、介護施設の入居者による証言ビデオを作成して、その施設向けに販売するようになった。
このビジネスは年間10万ドル(約1500万円)の収益を見込んでいたが、新型コロナウイルスによって頓挫した。介護施設はロックダウンし、契約は消え、終息の見通しも立たなかったため、ラーセンは撤退を決断した。しかし、このときの経験が、後の新たなビジネスにつながっていく。
ある日、ツイッターを見ていたラーセンは、事業買収を通じた起業を支援するインフルエンサーの投稿を見つけて興味を持った。その人物は、「自分でゼロから起業するより、既存のビジネスを買収するほうが賢明だ」と唱えて若い起業家を集めており、ポッドキャスト番組の制作を手伝いながら事業買収のプロセスを学ぶ人材を探していた。


