においからバーチャルとリアルの世界を変える
ソニーは今回の「におい展」で、テンソルバルブ技術の新たな可能性をまた示した。藤田氏も、これからさらに技術をブラッシュアップすべき方向性が見えたと語る。

例えば「においのパーソナライゼーション」だ。小型のアクチュエーターをイベントスペースや展示機材に複数配置して、ネットワークで制御管理することで、空間内の特定の場所に限り香りを漂わせたり・消したりするといった、より高度な制御も可能になる。
視覚や聴覚による映像体験に嗅覚を加えれば、エンターテインメントの没入感はいっそう高まる。今年、ラスベガスで開催されたエレクトロニクスショー「CES」に出展したソニーは、人気のゲームタイトル「The Last of Us」の世界に入り込めるイマーシブエンターテインメントの実証実験展示を行った。特設された体験ブースの中で、来場者は映像と音、武器を模したコントローラーによる振動技術(ハプティクス)のほか、室内に漂う「におい」を感じながら、とてもリアルな演出を楽しんだ。
空間全体を香りで満たす演出だけでなく、持ち運び可能な小型のにおい提示装置でリラグゼーションや集中力を高めるようなエンターテインメントも有り得るだろう。藤田氏は以前にソニーが商品として販売していたパーソナルアロマディフューザー「AROMASTIC」のプロジェクトリーダーとして開発にも携わった人物だ。
テンソルバルブの技術と、これを搭載するソニーの「におい提示装置」には海外の研究機関や企業も強い関心を寄せている。においを取り巻くウェルビーイングの実現、社会課題の解決は世界の人々にとって普遍的なテーマになり得る。これからテンソルバルブが海外の医療・研究分野のエキスパートとその知見、あるいは人々のニーズに触れて、一段とユニークな共創を実現することを期待したい。
期間は残りわずかとなったが、神戸煉瓦倉庫の近くにお住まいの方々はぜひ「魔法の香りコップ」も展示されている「におい展」に足を運んでみてほしい。
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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