視覚障がい者の歩行を支援するヘッドセット
.lumen(ドット ルーメン)はセンシングテクノロジーにより視覚障がい者の歩行支援に挑むルーマニアのスタートアップ。視覚障がい者のためのヘッドセット「.lumen Glasses」を2024年夏に発表したところ、100万ユーロ(約1.6億円)の資金調達を1日で達成した。CESにはEU加盟国のスタートアップを支援するEuropean Innovation Councilのアクセレレーションプログラムを通じて参加した。このヘッドセットはインテルRealSenseテクノロジーのコンピュータビジョンによる画像検出と解析技術を中核に採用する。独自のAIによる画像解析アルゴリズムは、センサーから取り込まれた情報を高度に領域分類(セマンティック・セグメンテーション)して、視覚障がいを持つ歩行者が安全に歩ける領域を確保。ユーザーが目の前の障害物を避けながら安全に、そして慣れれば盲導犬に導かれる速度とほぼ変わらないペースで歩けるようになるという。
基本原理はユーザーの額の正面側にあるRGBカメラと深度センサーで障害物との距離を測り、内側に配置した複数のハプティクスセンサーで「進むべき方向」を触覚で額に伝える。ブースで試作機によるデモンストレーションを体験したが、触覚フィードバックが返ってくる方向に身体の向きを変えつつ、ひたすら足を前に踏み出しているとアイマスクを着けた状態でまっすぐ歩くことができた。
ヘッドセットにはスピーカーも内蔵されており、歩行時にブザー音によるアラートも併用されるが、同社のスタッフによると「視覚に障がいを持つ方が安全歩行に集中できるよう、9割をハプティクス、残り1割を音声による支援に頼るというインターフェース構成にした」という。
同社は今後、.lumen Glassesを医療機器として商品化する計画を立てている。欧州各国で医療機器認証の要件が異なるため導入時期や価格は国ごとに異なってくる。まずは同社のお膝元である、ルーマニアから年内に発売予定だ。