チャンは、これらの課題すべてに対処することが可能な検証ツールについて、次のように説明した。「CNNを使ってフレーム内のスケート選手を検出し、境界ボックスを作成することができる。その上で、姿勢の推定と計算を使用すれば、ベクトルを測定して選手の脚の間の角度を計測したり、足が頭より高く上がっているかどうかを検出したりするなど、技術的な基準を確認するのに役立つだろう」
そのほかにも組み合わせることができるグループ分析がある。「これは審査員にユニゾンの瞬間を伝えることができる。もし選手の手足の角度がすべて平行なベクトルであれば、選手たちの動きが一致していることになる。ところが、選手が通常とは異なる姿勢を取ると、通常の姿勢推定データセットで訓練されたCNNは機能しなくなる。そのため、米カーネギーメロン大学と米メタのAI研究部門が開発したシャッフル&ラーニング方式を使用してCNNを事前に訓練することで、この問題を解決することができる。これは監視なしで学習するモデルを訓練し、意味のある結果を導き出すための配列検証タスクだ。つまり、訓練のために動画から3つのフレームを抽出し、シャッフルするかしないかを判断し、その配列が時間的に正しいかどうかを推測するのだ」
では、AIの活用によって人間の偏見を軽減することは可能なのだろうか? AIは他に何ができるのだろうか?
チャンは「この配列検証の過程を通じて、モデルはフィギュアスケートの姿勢推定に特化した感度と洞察を得ることができる」と説明。深層学習(ディープラーニング)を使用して個人とチームの両方を観察し、採点を自動化しながら人間の偏見を緩和することによってフィギュアスケートの公平性を高めることができるとし、「可能性が無限であることは明らかだ」と述べた。「私たちにとって公平であるということが利用可能な資源を使うということであれば、指導や自己分析のために手を加えるのは簡単だ」
チャンは、これらすべてがフィギュアスケートの技や演技の採点を向上させるとした上で、「私たちが個人的にAIで何をしたいのか、そして私たちが個人的にどんな世界の変化を見たいのかを問うのは私たち次第だ」と結んだ。
AIがスポーツにもたらす影響
男女16人のスケート選手が優雅な形を組み合わせ、リズムに合わせて調和しながら動いているところを想像してみよう。次に、正確な脚の角度や姿勢を検出し、データに基づいた採点をスケートリンクにもたらす機械の力を想像してみよう。
フィギュアスケートに限らず、他のスポーツ界でも新たな技術がもたらす影響は計り知れない。2025年は世界でさまざまな興味深い影響が現れ始める時期だからこそ、私たちはこれについて考えるべきなのだ。