宇宙

2025.03.18 10:30

宇宙望遠鏡SPHEREx、打ち上げ成功 宇宙最大の謎「インフレーション」に迫る

宇宙望遠鏡SPHEREx の観測領域のイメージ図 (C)NASA/JPL-Caltech

太陽光をプリズムにかけると7色に分光できるが、SPHERExの場合は0.75~5.0マイクロメートルという非常に狭いスペクトル帯域幅の近赤外線を102 色のカラーバンドに分光する能力を持つ。これは過去に運用された宇宙望遠鏡よりもはるかに高い色分解能を意味する。

1億の恒星と4億5000万の銀河をマッピング

天の川銀河内の恒星や分子雲のほか、極めて遠方の銀河を近赤外線によってマッピングするSPHERExのイメージ図 (C)NASA/JPL-Caltech
天の川銀河内の恒星や分子雲のほか、極めて遠方の銀河を近赤外線によってマッピングするSPHERExのイメージ図 (C)NASA/JPL-Caltech

SPHERExは全天をスキャンすることによって、私たちのホームグランドである天の川銀河に存在する1 億以上の恒星と、その外側に散在する4億5000万以上の銀河のデータを収集する。超高精度な観測機器によって過去には観測できなかった遠方の銀河まで捕え、宇宙の主要な光源のすべてを3Dマッピングし、その光の総量を測定する。

天体が発する光(可視光や赤外線など)を観測すれば、その天体がどんな物質で構成されているかが解る。それぞれの物質は特定の波長の光(輝線)を発し、または吸収するからだ。

たとえば鉄(Fe)を源とする光を観測した場合には、382.044nm(ナノメートル)、358.121nm、527.039nm、750nm、1100nmなどの波長に「輝線」や「吸収線」が表れる。その波長はそれぞれの元素に固有かつ普遍的なため、何億光年離れた天体であってもその構成物質を知ることができる。

ただし、ビッグバンの発生以後、宇宙空間は膨張し続けている。そのため遠方の天体が発した光は、宇宙を旅する間にその波長が空間とともに引き延ばされ、地球に届くころには可視光が波長の長い赤外線などに偏移する。これを「赤方偏移」という。

特定の物質を源とする光の輝線や吸収線の組み合わせが赤方偏移によってどの程度ズレているかを測定すれば、その光を発する天体が地球からどの程度の距離にあり、どのくらいの速さで地球から離れているかが解る。こうした観測方法を「赤方偏移サーベイ」という。SPHERExはこの法則にもとづき、4億5000万以上の銀河の赤方偏移の度合いを調べ上げ、各銀河の位置を厳密にマッピングしていくことで、かつてなく精密な立体宇宙地図を作成する。

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編集=安井克至

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