ここ数年、TikTokなどのSNS上で注目を集め、6000万ドル(約88億円)近くの年間売上高を達成し、人気のフィットネス玩具となったのがBoxbollen(ボックスボーレン)と呼ばれる製品だ。頭に巻いたバンダナに紐でつながれたボールをパンチするだけのこの製品のプロモーション動画は、リアリティ番組でスターになったクロエ・カーダシアンや、元サッカー・イングランド代表のウェイン・ルーニーらを起用して、それぞれ600万回以上の再生回数を記録した。
さらに、昨年11月に世界最高峰の総合格闘技団体とされる米UFCのスター選手、コナー・マクレガーを起用した動画の再生回数は、1700万回を突破した。
スウェーデンを拠点とするBoxbollenを共同創業したヤコブ・エリクソン(35歳)は、特許を持たない極めてシンプルなこの製品を、ほぼすべてセレブの知名度のみに頼って宣伝している。「新しいセレブを毎年確保できなければ、見せるべきコンテンツがなくなり、有料広告のエンジンを回すツールがなくなってしまう」と彼は語る。
エリクソンが、プロサッカー選手だった弟のヴィクター(33)と共に2018年に設立したBoxbollenは、ここ3年間、収益の最大50%をマーケティングに、さらに最大20%をセレブを起用した広告に投じてきた。この戦略は功を奏し、2024年の売上高は過去最高の5920万ドル(約87億円)に達し、純利益も500万ドル(約7億3500万円)を記録した。この数値は、創業後はじめての通年決算である2019年の売上29万ドル(約4300万円)、純利益9万ドル(約1300万円)から大きく伸びている。そして、エリクソンらはさらに野心的な未来を描いている。