スポーツリーグ設立の夢
Boxbollenは、2021年にユーザーが動画をアップロードして競い合うためのアプリをリリースした。このアプリの登録者は現在160万人を超えており、そのうち70万人以上が過去90日間でアクティブだった。この活発なコミュニティを生かし、エリクソンらは自社製品を使ったスポーツリーグの設立を目指している。
彼らは、すでにスウェーデンの学校でパイロットプログラムを実施し、賞金付きのオンライン大会も開催している。また、過去には11歳の子供があらゆる年齢層の参加者がいる大会で1万ドル(約147万円)を獲得したこともある。
「私たちの目標は、Boxbollenを世界で最も急成長したスポーツにすることだ。なぜそれが可能かというと、誰でもプレイできるシンプルなゲームだからだ」と、エリクソンは語る。
彼らの目標は、非常に野心的なものだが、世界には同様の挑戦をしているマイナースポーツが数多く存在する。例えば、2007年に米国のスポーツ用品メーカーが立ち上げた2対2でボールをトランポリンのようなネットに打ち込む「スパイクボール」は、2014年にプロツアーを開始した。また、サッカーボールを使った卓球のような競技「テックボール」は2021年にプロツアーをスタートし、2022年にはESPNと85万ドル(約1億2500万円)の放映契約を結んでいる。
しかし、真の商業的成功を収めるのは、もちろん容易なことではない。
「適切な経営チームと製品があれば、企業は何百万ドルもの収益を生み出すことができる」と、BMOキャピタル・マーケッツで小売・Eコマース分野のアナリストを務めるシメオン・シーゲルは語る。「問題は持続性だ。売上5000万ドル規模の企業が10年後にどうなっているかを予測するのは難しい」
それでも、Boxbollenはすでに大きな進歩を遂げている。
起業のきっかけはYouTube動画
エリクソンが、「これをビジネスにしよう」と思い立ったのは、現在の製品の簡易版のようなアイテムで遊んでいる男性の動画をYouTubeで見たのがきっかけだった。当時は、このような製品が市場で流通していないことを知り、彼は開発を決意した。その後、弟のヴィクターと共に、スウェーデンの法人設立に必要な最低額の約2500ドル(約37万1100円)を用意し、2018年のクリスマスシーズンに向けて1000個を生産した。結果として、最初の2週間でその3倍の販売数を記録した。
彼らは、最初の2年間はスウェーデン市場に注力し、地元のインフルエンサーに無料で製品を提供してPRを進め、徐々に大物へとアプローチを広げていった。2021年にイギリス市場に参入すると、ルーニーやジョン・テリーといったサッカー界のレジェンドを起用した。2022年にはカーダシアンを起用し、米国市場での存在感を示した。
現在、Boxbollenにとって最大の市場は米国で、2024年には売上の約85%を占めるに至った。
エリクソン兄弟は、今ではNFLのトム・ブレイディやUFCのジョン・ジョーンズ、ラッパーのスヌープ・ドッグ、さらには米保健福祉長官のロバート・ケネディ・ジュニアといった大物を広告に起用しているが、彼らをどうやって口説いたのかを明かしていない。しかし、兄弟は基本的に代理人やマネージャーではなく、セレブ本人と直接交渉している。また、売上の分配を含めて100万ドル(約1億4800万円)以上の契約金を提示し、自らセレブの元へ飛び、スマートフォンで広告動画を撮影することで、撮影日を設ける手間を省いている。