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2025.03.12 09:15

ウーパールーパーでパラダイムシフト コラーゲン商品の常識が変わるか

Getty image

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若々しい皮膚を保つたんぱく質「コラーゲン」に働きかける化粧品が数多い。その研究開発の多くは皮膚コラーゲンを唯一生成できるとされる線維芽細胞をターゲットにしている。ところが、皮膚コラーゲンのおもな供給源は線維芽細胞ではない可能性が出てきた。その常識をひっくり返したのが、ウーパールーパーだ。

岡山大学環境生命自然科学研究科、佐藤伸教授のもとで研究を行う博士後期課程大学院生、大蘆彩夏氏は、皮膚コラーゲンの生成過程を調べていた。これまで線維芽細胞がコラーゲンを作り供給していたと考えられてきたが、実際のところはよくわかっていない。ヒトや実験動物の皮膚が不透明なため解明が困難だったからだ。そこで大蘆氏は皮膚が透明なウーパールーパーの皮膚を調べることにした。すると、ウーパールーパーの場合、主要な皮膚コラーゲンの供給源は皮膚線維芽細胞ではなく、表皮細胞「ケラチノサイト」であることが判明した。

皮膚コラーゲンの生成過程の全体像が未解明のまま、線維芽細胞にコラーゲン産生能力があることだけはわかっていた。そのため、線維芽細胞が唯一のコラーゲン供給源とされ、それが常識になっていた。2022年、佐藤教授らは、ウーパールーパーを使って皮膚コラーゲン産生メカニズムの解明を試み、コラーゲン産生を担う線維芽細胞の同定に成功した。それまで考えられていた線維芽細胞のイメージとは異なる「非常にユニーク」な形態の細胞で、同研究室はそれを「織姫細胞」と名付けた。

ところが、若いウーパールーパーの皮膚を調べると、コラーゲンが存在する証拠であるきれいな網目状になっているにもかかわらず、織姫細胞は発見されなかった。つまり、線維芽細胞以外のものがコラーゲンを供給していることになる。さらに調査してわかったのは、それまでコラーゲン生成には関係がないと思われていた表皮細胞「ケラチノサイト」がコラーゲンのおもな供給元だったという事実だ。

これはウーパールーパーに限ったことではなく、魚、ニワトリ、マウスでも同じくケラチノサイトでコラーゲンが生成されている可能性が高いことが確認されている。もしヒトでもケラチノサイトが皮膚コラーゲンの供給源だったとしたら……。これまで線維芽細胞に注目してコラーゲン商品の開発を進めてきた研究者に、ウーパールーパーが「こっちだよ」とまったく違い方向を指し示すことになる。日本だけでも年間850億円規模という研究開発が、ターゲットの見直しという根底からの転換を求められる事態も予測される。しかし同時に、皮膚コラーゲン関連製品の開発が、これによって飛躍的に進歩する可能性がある。佐藤研究室が目指す「永遠の17才の肌質の実現」に大きく近づくだろう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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